第二百二十四話 「なんだ番人ってボーン兵かよ。ただの雑魚じゃねぇか」
今月第四話。
ブィンド大洞窟 深層
ドン
「ウ、ウ~」
受け身を取り、ダメージを和らげる。ゆっくりと深呼吸をして、冷静に周囲を見渡す。ドロシーの風魔法のおかげで大した怪我は負わずに済んだ。
エクストラポケットから自作ポーションを取り出し、回復する。
(しかし、ここはどこだ。俺達は何層落ちた?)
「皆…無事か?」
「ウウ、どうにかね」
近くに居たドロシーに手を伸ばし、起こした。
「ありがとう」
風魔法の発動前に集まったおかげで大して離れていなかった。
「痛てて、ここはいったいどこっすか?」
落ちた場所は大きな空間。暗闇のせいで正確な形状は分からないが周囲の壁などを見るにドーム型に見える。野球場のような空間みたいだ。
(嫌な予感がする。もしかしてここって)
「そっちの嬢ちゃんが居なかったらただじゃすまなかった。ありがとうな嬢ちゃん」
「勘違いしないで、べ、別にあんた達のためにしたわけじゃないから。それにあたしの名前はドロシーよ」
「ガハハ、それは悪かったドロシー。…ったく、このバカはこんな状況でも寝てやがる」
ヴァンレンスは近くに転がっているレイルを見て、苦笑した。
「それにしてもここはどこなんだよ。俺達はどうやったら帰れるんだよ」
情けない声を出しながらジェイが上を見上げていた。
(確かに、天井まで十メートルくらいはあるな。通りかかった誰かにロープか何かを下ろしてもらうか。いや、ドロシーに飛んでもらいロープを下ろしてもらえればいいのか)
ドロシーとジェイの所の魔導士はマジックポーションを飲んで魔素を回復していた。
「ここはおそらく噂の深層だろう」
「てことはどこかに宝があるっすか」
「ああ、ついでにそれを守る番人もいるだろうけどな」
実際に存在していたとはな。ほとんど都市伝説レベルって話だったから、番人もどんな魔物かは分からない。
「へっ、だが確かになにかがいるな」
「おいおい、もうボロボロのヘトヘトだぜこっちは。これ以上は勘弁してくれ」
残念だがそんな弱音を聞いてくれるような番人ではなさそうだ。
「回復は今のうちに済ませとけ」
「お出ましのようだぜ」
暗闇から出てきたのはアンデッド族のボーン兵だ。
ボーン兵はその名の通り死者の骨で出来た魔物だ。アンデッド族のほとんどは何かしらこの世に未練があるものが多く、死後埋葬などをされず野ざらしだった魔物が変貌したものだ。ボーン兵も同じで長年放置された白骨死体がアンデッドになった。生前の記憶は残っておらず、ただ彷徨い続け近くに来た魔物を襲うだけの動く骨だ。
弱点は聖、光属性の攻撃、あとは左胸にある紫色の核を砕くだけで倒せる。討伐ランクもEランクで中級冒険者に上がりたての俺達にしては丁度いい相手だ。
「なんだ番人ってボーン兵かよ。ただの雑魚じゃねぇか」
ヴァンレンスは近づき、大振りの一撃で動きの遅いボーン兵を仕留めようとしていた。
ザン、ボトリ
しかし、次の瞬間よろめいたのはヴァンレンスの方で右腕は切り飛ばされ、傷口から血が噴き出ていた。
災難は続いていくもの。