第二百二十三話 「ガハ」2
今月第三話。
薬品と岩、エクストラを投げ込んでいくがオオミミズの進む速度は少し遅くなったくらいだ。距離はすでに百メートルを切るくらいの所まで来ていた。
(ッチ、右が使えたらもう少しうまく投げられるんだけどな)
「皆どいて、一発でかいのいくわよ」
「頼む!」
男性陣は邪魔にならないように一斉にドロシーの後ろに素早く避難した。
「炎中級魔法フレームボルテックス」
巨大な炎の渦がオオミミズを包んでいく。オオミミズは弱点である炎にもだえ苦しみ、壁や地面に体当たりする。
しかし、その程度でドロシーの炎魔法から逃れられるわけもなく、オオミミズは静かに倒れた。
ピシ、バキ、ピキ
『よっしゃ~!!!』
脅威が去ったことに喜ぶ一同だが俺は通路がきしむ音を聞き逃さなかった。
「おい!早くこの場を…」
言葉を言い切る前に自分達が立っていた床がひび割れ、崩れた。
ズン、バキバキ、ドン
物理法則にのっとり俺達は次の層へと落ちていく。
「やばいっすやばいっす!」
「死ぬ死ぬ死ぬ!」
この層はオオミミズが掘り進んだ穴とドロシーの炎魔法で崩れるまではまだ予想できた。一、二階くらいならそこまでダメージもないと思っていた。
しかし、落ちたのはさらに下だった。オオミミズの暴走とドロシーの高火力の魔法によって洞窟は何層にもわたって被害が出ていたようだ。
(これはまじでやばいな、何層下まで崩れている?)
下が見えないくらい落ちるとなると落下死で全滅してしまう。
「ッチ、手間かかせやがって」
ヴァンレンスは崩れている岩などを器用に飛び移り、まだ気絶しているレイルを拾っていた。
「ハアハア、おいいつまで寝ているんだお前は」
ジェイも仲間の槍使いを救助した。
「ドロシー、魔素はまだ残っているか」
「ギリギリ中級魔法一発分は、でも箒で全員は拾えないわよ」
当然、箒で飛ぶにも魔素は必要になる。一人分なら少量で済むがこの場にいる全員だと魔素量と時間が足りない。
(そういえば、こいつは箒で飛べるんだったな。あっち側の魔導士も飛べるのだろうか。いや、それでも時間が足りないな)
「一か八かだ。皆出来るだけ集まってくれ」
「ドロシー、俺の合図で風魔法を頼む」
下層の地面が見えた時に俺はドロシーに合図した。
ドロシーはコクリと頷き
「風中級魔法アラゲイル」
下に向けて放たれた魔法は地面に当たり俺達の方へ返される。
穏やかな風ではなく暴風が吹き荒れた。
「うわ~」
「グ」
「ガハ」
各々の悲鳴が聞こえるが自分の受け身で精一杯だ。
ガン、ドン
風魔法の攻撃は痛かったがおかげで落下の衝撃は和らげられた。
オオミミズから下層へ落下。
まだまだ大洞窟での冒険は終わらない。