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現実逃避からの異世界冒険物語  作者: Piro
現実逃避からの異世界転移編
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第十九話 「いや、大したことしてないしいいよ。んじゃおっさんこれからは気を付けて買い物しろよ。」

おっさんはこの物語では重要人物です。

 貰った冒険者ノートをパラパラと読みながら俺はギルドを後にした。冒険者ノートには初心者冒険者のためのアドバイスや禁止事項などが書いてあった。冒険者同士の争いは禁止されているとかクエスト中は依頼者の利益を優先するなどが書いてあった。

(まあ、後でちゃんと読も。)

 ギルドを出ると大通りがある。次の目的地の装備屋はこの大通りの真ん中あたりにある。ブィンドには装備屋が数店舗あるが、これから行くのはサンダーバードの皆が良く行く店だ。俺も数回おつかいなどで行った事がある。

 大通りを歩いていると八百屋で黒のローブを着たぽっちゃりのおっさんと店主の言い合いが聞こえてきた。黒のローブを深々と着ているせいでシルエットしか分からない。声で中年男性だと分かった。

「この金貨ではだめなのか。」

「いや、だから、オリン1つに金貨渡されてもおつりがないって。」

 ちらっとそっちに目をやるとローブを着ているおっさんと少し困っている店主が見えた。おっさんは少し身なりがいい様に見える。ローブからちらっと見えた服はかなりいい生地だしおっさんの両手にはオリンと金貨1枚。ちなみに、オリンとは果物の1種で、味や見た目などは元居た世界で言う所のリンゴに似ている。

(あのおっさん貴族か商人だな。だけど、買い物が下手な所を見ると貴族。それもかなり上流の。)

 そんなことを考えていると八百屋の奥にある脇道に怪しい2人組が見えた。その2人組はじっとおっさんの方を見ている。恰好から見るとチンピラだな。

(うわー完全におっさんをカモとして見てるよ。てかこれって索敵を持ってたから見つけられたのか。なんか、気付けたって感じしたしな。レベル1だとこんなもんか。)

 このまま放っておいたら絶対におっさんはこの後カモられる。

(このまま放っておいてもいいけど。助けるか。)

 俺は八百屋に近づいた。

「では、おつりはいい。」

「いや、それは悪いって。」

 店主とおっさんはまだ言い合ってた。

「おっちゃんオリン1個いくら。」

「え、ああ鉄貨1枚だよ。」

 俺は鉄貨1枚を小銭袋から出して店主に渡した。そして、オリンと金貨を両手に持っているおっさんのローブの袖を引っ張りそのまま強引に歩いて行った。

「わ!何をする。」

 おっさんは少しびっくりしていたが、構わずそのまま引っ張って歩いた。

「あんちゃん、ありがとうよー」

 後ろで店主の声が聞こえた。俺は手を軽く振ってこたえる。


 しばらく歩いて広場のベンチで袖を放した。

「はーはー。」

 おっさんは息切れしながらベンチに座り込む。

(少し小走りぎみで歩いたけどこんな息切れるか。)

「大丈夫かおっさん。」

 俺もおっさんの隣に座る。

「ああ、君は一体誰かね。」

 おっさんはゆっくり息を整えてから聞いた。

「俺はヒロシ・タナカ。通りすがりの冒険者だ。おっさん貴族だろ。」

「な、なぜそれを。」

 おっさんは少し驚いてそして少し構えた。

(警戒するのは分かるけど、この距離じゃあ意味ないだろ。)

「別に、服装見れば分かるし。てか、オリン1つに金貨1枚渡そうとしてるところ見ると世間しらずの上流貴族かなって。」

 俺は怪しい2人組の事は伏せたまま話した。話して妙に警戒されても困るし。

「そうか。ヒロシとか言ったか助かった。礼を言う。」

 おっさんは俺の話を信じてくれた様だ。

「で、おっさんこれからどうするの。」

 正直馬車か何かで帰ってほしい。このままだったらまたどっかで狙われそうだ。

「うむ、今日はおとなしく帰ろうと思う。」

 俺はそれを聞いてホッとした。

「そっか、じゃあ馬車乗り場まで送るよ。」

「いや、それは大丈夫だ。執事が見えた。」

 おっさんの目を追うと確かにタキシード姿の男性が近づいてくる。歳は中年くらい、しかし体格はしっかりしている。顔は少しやつれている以外は整っている。

「そっか。むかいが来たなら。俺は行くわ。」

 俺はベンチから立って去ろうとする。

「待ってくれ。これお礼として受け取ってもらいたい。」

 おっさんは貨幣が入ってある袋を渡そうとする。

「いや、大したことしてないしいいよ。んじゃおっさんこれからは気を付けて買い物しろよ。」

 俺はそのまま大通りを駆けていった。

出会いは隙あらば差し込みたい要素。

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