第二百十九話 「ここから先は何でもありだ。死んでもあの世でキャンキャン喚くなよ!」
今月第二話。
「ヒロシ・タナカとジャック・ビーン、お前達の事は噂になっているぜ。冬越し熊に新人殺しを倒した活きのいいルーキーがいるって」
ドン
ヴァンレンスの拳が盾ごとジャックを吹き飛ばした。
「ウワー!!!」
ザシュ
一瞬のスキを逃さず、レイルは俺の左肩を切った。
「よそ見厳禁」
「ック」
(あの爪そこらの刃物よりよく斬れるじゃねぇか。それになんだあの霧のような物)
レイルの両手に赤い霧状なものが纏わりついているものが見える。まるでオーラのような。
戦況は一方的だった。ジャックは守り一辺倒でサンドバッグ状態。リタも自分の身を守るだけで精一杯。俺は獣人のタフネスと素早さ、しなやかな動きに翻弄され防戦一方になっていた。
(急所だけは守っているがこのまま徐々に削られると倒されるのも時間の問題だ)
唯一拮抗しているのはドロシーだ。最初は相手の三属性の魔法に押され気味だったが高い魔力の力業だが押し始めている。
ドン
「ガハ」
レイルのミドルキックが俺の腹にもろに決まった。
ドジャシャ
十数メートル蹴り飛ばされた。
トントン
(電光石火!)
すぐに起き上がり、反撃に一気に詰め寄る。
「バックステップ」
俺の双剣はものの見事に相手の歩行術で見切られた。
素早さはほとんど同じだが地形を使った戦い方が厄介だ。壁走りや岩等の遮蔽物を巧みに使い、洞窟内の地形を生かす戦い方をしてくる。体が柔らかいのかいつもは当たるはずの攻撃を紙一重で避けられた。
(柔軟的な動きに型にとらわれない野性的な近接戦闘。このシーフ強い)
ガン、ザシュ、ガブ
嚙付きに爪と足技を連続でくらい俺は耐えきれず片膝をつく。
(ああ、もうなんか全てがどうでもよくなってきたな)
「クハハハ、アハハハ」
「おいおい、お前の相棒遂に壊れたぞ」
「あ~あ、知らないすよ。ヒロシを怒らせたら怖いっすから」
(そうだよ、相手は格上なんだ手を抜いて戦うなんて元々無理な話だったんだ。胸を借りる思いでやるだけやってやる)
ここで全てを出さずに殺されるなら全部出してでも生き抜いてやる。
「殺す気があるってことは殺される覚悟は持っているよな!」
自分でも分かる殺気と怒りが全身からこみ上がってくる。
それを感じ取ったのかレイルは数歩飛び下がった。
「ここから先は何でもありだ。死んでもあの世でキャンキャン喚くなよ!」
戦闘シーンはなるべく早めに終わらせたい。