第二百九話 「みんな戦闘準備!」
今月第1話。
キラーアントは西大陸の地中に生息している昆虫型の魔物だ。大きさは一メートルくらいで、大顎と強酸の攻撃を得意としている。アイアンアントほどではないが外殻は硬く。自分で巣を作らず、他の魔物の巣を奪って根城にする。性格は非常に好戦的で獰猛。集団ではなく個体で生息することが多い。弱点は煙と火だ。以上魔物図鑑Ⅱに記載されていた主な情報だ。
「ヒロシあれって」
目の前にキラーアントが見えた。ブィンド大洞窟中層に生息する魔物の中で厄介な魔物が二体いる。その一体がキラーアントだ。
キンキン
キラーアントは大顎を鳴らして威嚇している。
「ジャック酸に気を付けろ。ドロシー炎魔法準備」
「うす」
「もうやっているわ」
リタはすでに邪魔にならないように岩陰に移動していた。
先に動いたのはキラーアントの方だった。ジャックめがけて酸を吐いた。
「おっと」
素早い動きと強酸はジャックに相性が悪い。
「ジャック落ち着け。ドロシーの魔法の時間を稼げればいい」
以前とは違う、俺とジャックしかいなかった二人の時とは。俺達には魔法という新たな攻撃手段がある。
「ドロシーゆっくり確実に射線を探せばいい。ジャックが時間を稼いでくれている」
「…ええ、任せて。炎中級魔法ファイヤーランス」
炎の槍は見事キラーアントに命中、キラーアントは静かに倒れた。
洞窟のような狭い場所が多いと射線を探すのも難しい場面がある。特に戦闘に慣れていないと考える事が多くてパニックになりやすい。
俺は戦況整理のためにも積極的に仲間達とコミュニケーションをとることにした。自分では見えないことも仲間達となら見えることもある。
「よし、このまま中層を進んでいくぞ」
中層の拠点作りから順調に探索と攻略は進んでいた。
流石大洞窟だ。奥に行けば行くほど入り組んでいる上に中には魔物の巣に繋がっているルートもある。
前方に少し開けた場所が見えた。洞窟にはこのような空間が大小いくつか存在している。
「!」
俺は左腕を横に伸ばし、ジャック達を制止した。
探索時は忍者の俺が一番前で索敵をしている。すぐ前衛に行けるようにジャック、一番安全な中間にリタ、後方に魔導士のドロシーを置いて一列で探索していた。
前方にいたのはブィンド大洞窟中層の中で一番厄介な相手だった。
「みんな戦闘準備!」
相手は土ゴブリン、別名コボルトと呼ばれる魔物だ。攻撃力や身体能力が高いわけではない。個体だけならキラーアントより弱いだろう。ただし、土ゴブリンの面倒なところは生まれつき持っている魔法適正と集団での連携。この魔物を倒さない限り中層攻略は出来ない。
花粉症の季節到来。