第二百六話 「ありがとうございます!」
今月1話目。
4月25日 夜
ケビンさん達、ライオンハートが遠征から帰ってきたこともあり夕飯はごちそうだった。
たらふく食べた俺は庭に寝そべり、夜空を見つめていた。
今回のクエストは散々だった。初めての四人パーティーということもあり指揮が全然うまくいかなかった。もう一度行ってもうまくいく気がしない。個人ではなくパーティーの壁にぶつかった感じだ。
(パーティーの弱点は理解できた。ただ、どう解消するかだよな)
「ヒロシ君はまた何か悩んでいるようだな」
「ケビンさん」
「皆からいろいろ聞いたよ。新たな仲間とサポーターの事とかね」
遠征で疲れているはずなのにケビンさんは横に寝そべり悩みを聞いてくれた。
「なるほど、ヒロシ君が作ったパーティー、冒険の中で自然にリーダー的な立ち位置になったと」
パーティーのリーダーは別に俺と明確には決まっていない。ただ、中衛の立ち位置とパーティー指揮をするようになってからは自然にリーダーのようなポジションになった。
「ふむ、リーダーになることは別に悪い事ではない。パーティー内での役割はそれぞれあり、皆が全うすればいい」
簡単に言うが難しいことだ。
壁役であるジャックが敵をひきつけたり、前線を維持したり、後衛のドロシーは的確な位置で魔法支援を行う。俺は中衛でバランスを見て動く。これが基本的なフォーメーションだ。
「そこでだ。ヒロシ君に問おう。リーダーの役割とは何かな」
「え、それは指揮じゃないんですか」
「ハハハ、指揮はリーダーの仕事ではないよ。パーティーの指揮者とリーダーはまた別の話だ。現にライオンハートの指揮は私ではなくルイスがやっているからね」
俺はリーダーが指揮をするのが当然のことだと思っていた。
(違ったのか、だったらリーダーの役割って)
「私が思うにリーダーとは導く者のことだ。パーティーの舵取り役、パーティーが何処に進むかを決める。それがリーダーの役割の一つではないかな」
「パーティーを…導く」
「ああ、パーティーの皆を導き進む、大変な仕事だよ。そして仲間の命も同時に導かなければいけない。パーティーリーダーはたとえどんなことがあっても仲間を連れて帰ってこなければいけない」
力強く語ったケビンさんはまるで自分自身にも言い聞かせているようだった。
「…」
「そう難しく考えなくてもいい。リーダーは仲間に支えられ成長するものだ。君達はまだ出来たばかりなのだからゆっくり成長すればいい」
「ありがとうございます!」
その夜はいつもより目が冴えてしまったのでクエスト用のレポートを片付けた。
頼りになる先輩ケビン。