外伝3 背中の傷は痛み易い
これからもちょくちょく外伝書いていきます。ブーレメンバンドの物語書ける時が来るといいですが。
「いってらっしゃい。」
裕君とケビンさんがギルドへ出かけるのを見送った後、私はキッチンに戻り食卓を布巾で拭く。
「あー。うー。」
食卓の隅でエースがうなだれている。
「ちょっと。そこにいると邪魔なんだけど。」
エースがうなだれている原因はちょっと心当たりがある。
「そう落ち込む必要はないと思うが。」
エースの隣に座っているキッドも励ましている。
「だって。よりにもよって木刀術が当たるーか。」
エースは相変わらず語尾を伸ばす独特な話し方だ。長年一緒にいるけどやっぱり特徴的だなと思う。
「木刀術だって悪くないでしょ。裕君だってありがとうって言ってたじゃない。」
エースは私たちの後輩になるはずの裕君が木刀術を習得した事で落ち込んでいるようだ。
ラウラから裕君が冒険者に興味がある事を聞いて、暇な時を見つけてはエースは裕君に剣術を教えていた。冒険者はかなり危ない職業だから序盤から戦闘で助かる武器アビリティを覚えさせようとしたんだろうけど、よりによって裕君が習得したのは実戦ではあまり使わない木刀術。エースのせいではないのに当人は結構落ち込んでる。
(まあ。真剣じゃなくて木刀を使っていたのは組手中にケガさせないためだろうけど。こう見えて面倒見いいんだけどな―。話し方のせいかチャラ気さが抜けないのよね。)
「エイラの言う通りだ。どんなアビリティ、スキルも使い方次第だ。」
「そりゃそうだけど。出来れば両手剣、もしくは片手剣とかだったら―な。」
エースはまだ食卓に突っ伏してうなだれている。
「こればかりは運でしょ。」
私は力ずくでエースをどかして食卓を拭き終える。
アビリティの習得方法はレベルポイントを消費する以外に他人から教わる方法がある。例えば剣術アビリティを持つエースと剣術の練習をしていると剣術系統のアビリティがランダムで手に入る。でも、習得できるかは本人の才能による。魔法を教えても魔法の才能が無ければ習得できない。
(まあ、武器アビリティは大抵習得できるけど。)
「まあな。はー、そういやラウラはどうしーた。」
エースがため息交じりに私達のもう1人のパーティーメンバーのラウラを探す。
「ラウラだったら。とっくに朝ごはん食べて出かけたわよ。」
「へー。こんな朝からクエストーか?」
ズー
エースは食後のコフィを飲みながらドアのある方を向く。
今、私達のパーティー、ブレーメンバンドは各々でクエストを取っている状態だ。稀に私以外の三人が集まってクエストをこなすこともあるらしいのだが、4人でクエストをしなくなった原因は私だ。
(まだ、外に出る勇気が出ない。)
私は背中を少しさする。そこにある傷はとっくに塞がっているのに私はまだ杖を持てない。待ってくれている皆に申し訳がないのに。
「うーん。多分クエストじゃないと思う。」
私はキッチンにある食器洗い場に向かいながらエースの疑問に答えた。
(多分ラウラは裕君を心配して先回りしてるんじゃないかな。ここにいる皆ってやさしいんだから。過保護ともいうけど。)
「ふーん。んじゃ俺は軽いクエストを受けて来るーわ。」
エースはコーヒーカップに残っているコーヒーを飲み干して食卓に置いてそのままキッチンから出て行った。
「もう。飲み終わったら洗い場まで持って来てよね。」
私が文句を言ったらキッドが自分のと一緒にエースのカップを持ってきた。
「ありがとうキッド。」
「わしも外で鍛錬してくるかのう。いってくる。」
「いってらっしゃい。」
(さてと、皆が外出中に掃除済ませよう。)
アビリティの説明をもう一度してます。