第二百三話 「よし、二人とも言い分は分かった。ただ、二人とも分かっているだろ、どっちも悪気があるわけじゃないことくらい。今回はタイミングが悪かっただけだ。お互い次気を付けよう」
今月第三話。
「リタ危ない!」
俺はリタの襟元を掴み、位置を交換するように後ろに引っ張った。
「フン、痛!」
目の前のオオゲジを短剣で倒した。
(最後に噛まれたか。でも、オオゲジの毒なら毒消しで処置できる)
オオゲジの顎には毒があり、傷をそのままにしていると腫れ、最悪切除をする必要がある。
「ごめんなさい、大丈夫デス?」
「ああ、大したことない。それよりリタはあまり前に出すぎるなよ」
エクストラポケットから毒消しを取り出し、傷に直接ぶっかけた。
「痛いっす。ドロシーこれで何度目っすか。わざとっすか」
「そんなわけないでしょ。ジャックこそいつもあたしの前に出ないでよ」
またか、本日三度目になるジャックとドロシーの喧嘩が始まった。
「あわあわ、二人とも落ち着くデス」
リタが仲裁しに行くが二人ともなかなか収まらない。
ブィンド大洞窟攻略二日目にして俺達のパーティーはぐちゃぐちゃだ。
「ハア~、お前ら少し落ち着けって」
「だって、ドロシーが魔法当ててくるんす」
「ジャックが前にいるのが悪いのよ。もう少しうまく動けないの」
こんな早くパーティーの弱点が見えてくるとはな。
まずリタは周りがあまり見えておらず、戦闘中でも素材を見つけると取りに行ってしまう癖がある。安全が確保できているのならいいがそういうわけでもなく、よく魔物に見つかって危険な目に合っている。
続いてジャックとドロシーの連携問題。ジャックはこのパーティーの壁役。前衛を一手に任せてある。ただ、前衛が一人なのでどうしても魔物の攻撃を集める形になってしまい前線維持するので精一杯なのだろう。しかし、後衛のドロシーは初のクエストということもあり前へ前へ行こうとする。するとどこかのタイミングで二人がぶつかる。そして、洞窟内という閉鎖空間だとドロシーの魔法が通る射線も限られてくる。
タイミング悪くジャックが魔物の攻撃を回避等前方で移動していると先のようにドロシーの魔法が背中に当たる事がある。もちろん、二人とも悪気があるわけではないがミスが続いてしまうとどうしても喧嘩に発展してしまう。
(はあ、一番問題なのは俺なんだけどな)
俺のパーティー内のポジションは中衛だ。パーティーの指示をしつつ周りと戦況を確認しながら後方支援、前衛支援と移っていく。パーティーが四人になったことで情報量と支援内容も増えて中衛の難しさに直面していた。
「よし、二人とも言い分は分かった。ただ、二人とも分かっているだろ、どっちも悪気があるわけじゃないことくらい。今回はタイミングが悪かっただけだ。お互い次気を付けよう」
パーティ―の雰囲気最悪。