第二百一話 「きっと役立ってみマス」
今月第一話。
4月20日 7:11
「さてと、改めてよろしくなリタ」
ブィンド大洞窟までの道のり、皆で軽く情報交換という名の雑談をした。ドロシーにとっては初めてのクエスト、俺とジャックにとっても未知な場所。緊張で動けないのが一番危険だからな。互いを知りつつ少しリラックスしてもらい、戦闘ではいつもの戦い方が出来ればいい。
(初の四人パーティーだからな。指揮も大変だ)
ちなみにリタはパーティー登録していない。俺達がリタをサポーターとして雇っている形だ。報酬は山分け、仕事内容は素材採取及び雑用などだ。
サポーターのリタがブィンド大洞窟を攻略するまでの暫定パーティーメンバーとして加入した。
「はいデス」
リタの職業はレンジャー、ダンジョンや洞窟、廃墟等を探索するのに適している職業だ。
これでもう少し戦闘能力があれば先行して安全確認もできるのだがリタには荷が重いだろうな。
「ほう、アビリティマッピングを持っているのか」
「はい、僕が居れば洞窟内で迷うことはないデス」
リタは胸を叩いて、どや顔をした。
アビリティマッピングはレンジャーやシーフ系の職業アビリティだ。
入り組んだ場所でも自分達が歩んできたルートを知ることが出来る。ダンジョンの地図作りに適したアビリティだ。
4月20日 8:00
ブィンド大洞窟
ピクニック気分でゆったりと来たので少し時間が掛かってしまった。
「アハハ、すまないっす」
「ジャック、いやデス」
「もうジャックったら、ウフフ」
どうやら三人ともからかう程度には仲が深まったようだ。
「よし、気を引き締めろ!ここから洞窟に入るぞ」
まるで学生を引率する先生のような気分だ。
「うす!」
「いよいよね」
「きっと役立ってみマス」
ブィンド大洞窟は地下数十メートル、入り口になる洞穴は約五メートルある。上層、中層は他の冒険者で調べつくされているが下層は未知なところも多い。噂では最下層には財宝があり、それを番人が守っているらしい。俺達の他にも洞窟に入っていく数組冒険者パーティーが見えた。
一応食糧は十分に持ってきてはいるが慣れるまでは何度かトライしていくしかないだろう。
(とりあえず初日は上層で洞窟調査をしながら、安全そうな場所を見つけ拠点を作る所までが目標だ)
魔物だらけの洞窟でもいくつかセーフポイントがあり、基本的にそこを拠点にして探索を進めていくらしい。
いよいよ新しい場所でのクエスト開始!