第二百話 「皆さんありがとうございマス!」
今月最終投稿です。
「このポーチがどうした?」
俺が聞くとリタはポーチのジップを引っ張り、中身を見せてきた。
「!」
中には何も入っていなかった。いや正確には暗闇で中身が見えなかった。
(これはまるでエクストラポケットのような)
「このポーチは僕のスキルデス。僕のスキル乙女のウエストポーチは収納ポーチなのデス。こう見えて結構収納できるのデスヨ」
リタはあっさり自分のスキルを俺達に開示した。
リタのスキルはおそらく空間系の能力だろう。エクストラポケットのようにポーチにアイテムを入れて自由に取り出しが出来る。サポーターとしては喉から手が出るほど欲しいスキルだ。
(しかし、このスキルを他の冒険者に知られれば今以上にコキ使われるかもしれない)
「お前な。スキルやアビリティをまだ出会って少ししか経ってない俺達に教えていいのか」
「はい、皆さんは僕を助けてくださいました。こんな役立たずのサポーターの僕をデス」
リタの話を聞くとリタには病弱な妹がいるらしく、二人ともハーフとのこと。獣人の母親は妹を生んだ時に、ヒューマンの父親は一年前に過労で他界した。妹の医療費と薬の費用を稼ぐためにリタは仕事を探しに出たがシャルル王国でもハーフの就職先は少なく、とりあえず稼ぐために誰でもなれる冒険者になったらしい。
(確かに成功している冒険者を見れば金を稼ぎやすい職業に見えなくもないのかもしれない)
しかし、現実は厳しく戦闘が得意ではないリタはサポーターとして冒険者パーティーの後ろをついていき、雑用をこなす事しかできなかった。
「ウググ、わかるわかるっす。辛かったすね」
リタの身の上話を聞いたジャックは号泣していた。
「…それで、リタちゃんはこれからどうしたいの?」
このままサポーターを続けても大して稼げないだろう。それなら、改めて他の職業を探す事を考えた方がいいのかもしれない。
「僕は…」
すぐには決められないか、いやずっと悩んでいたのかもしれない。他の仕事を探したいが妹のために金がいる。
(サポーターか。丁度いいのかもしれない。懐は温かくないけど、うまく稼げればどうにかなる…か。何よりジャックもドロシーもすでにリタを放っておけなさそうだし)
「じゃあ、しばらく俺達についてくるか?報酬はそこまで高くないがそこは要相談でどうだ」
「!いいんデスか?」
「勘違いするな。サポーターが一人いれば少し楽になるかもしれないと思ったからだ。報酬分はしっかりと働いてもらうぞ」
俺はジャックとドロシーの方を向く。念のために二人の意見を聞いとこう。
「賛成っす。ハーフ同士支え合うっす。それに調査クエストにサポーターがいれば俺達は戦闘に集中できるっす」
「あたしも賛成!これからよろしくねリタちゃん」
「皆さんありがとうございマス!」
明日早朝にブィンド東口に集合をすることだけ決めて解散した。
ついに本編も200話になりました。最近PVも増えてきていてうれしいです。