第百九十九話 「あ、それは僕にはこれがあるからデス」
今月6話目。
「な、なんだお前ら!」
「おい!あいつらの紋章って」
「い、いや、これは違うんです」
獣人の少女を虐めていた冒険者達は俺達の装備にあるサンダーバードの紋章に気付き態度を変えた。
「何が違うのよ。あたしからはあんたたちがこの子からカツアゲしている様にしか見えなかったけど」
「い、いや。ヘヘヘ…ッチ、行くぞお前ら」
俺達に言い訳が通じないと分かると冒険者達はその場から去った。
(とりあえずやりあうことにならなくて良かった)
「もう大丈夫よ。立てる?」
ドロシーは優しく獣少女に手を差し伸べた。
「あの、ありがとうございマス」
「気にすんな。俺達が勝手に助けに出ただけだ」
「そうっす」
俺とジャックも路地裏でひどい目に合った事がある。衛兵の目も路地裏を常に見張れない、故にカツアゲや盗みの犯罪が起こりやすい。
「立ち話もなんだ。どこか落ち着ける所で詳しい話を聞かせてくれるか?」
「あ、はいデス」
(この近くでどこかないかな)
「あ、自己紹介がまだっすね。俺はジャック、でこっちがドロシーとヒロシっす」
「僕はリタ、リタ・ビーグルデス」
4月19日 16:00
ファミリア サンダーバード 自室
結局いい場所が見つからなかったのでファミリアに案内した。キッチンではエイラさんが晩御飯の支度を始めていたので自室に上げた。四人だとかなり狭く感じる。
「それでどうしてあいつらはリタからカツアゲをしていたんだ?」
「僕はフリーの新人サポーターで彼らは僕と契約した冒険者達デス」
リタは最近冒険者になったらしくまだ仲間がいない。戦闘にも自信がないのでフリーのサポーターとして、どこかのパーティーの後ろで冒険の支援をしていた。
ただし、出来るのは素材集めと解体などの基本的なこと。新人サポーターに回されるのは雑用ばかりだ。
リタの話では冒険者業界ではサポーターは舐められがちで虐められることもあるとのこと。
それでも少しずつポイントを溜めていきついに先日Eランクに上がったらしい。
(ランクが上がることは喜ばしいことだが。戦闘が不得意なリタにとっては受けられるクエストがさらに狭まることになる。契約できる冒険者のランクも上がる)
「どうして冒険者になろうと思ったの。他にも仕事はあると思うし。もっとリタちゃんに合った職業があると思うのだけど」
「それは…」
「言いにくい事ならいい。人それぞれ事情っていうものがある。気にするな」
しかし、根本的な解決は出来ていない。戦闘が苦手なサポーター、それも新人を雇ってくれるところがあるか。
(俺達も別に懐があるわけではないからな)
「それにしてもサポーターって言うから大きいバッグを担いでいると思ってたんすけど」
サポーターは素材集めや道具持ちのために大きなカバンを担いでいる者が多い。
「あ、それは僕にはこれがあるからデス」
リタが取り出したのは白いポーチだ。
始まって以来初めての7000pv越えを達成しました。ありがとうございます。
これからも読んでいただけるように精進しますのでよろしくお願いいたします。