第百九十七話 「駄目じゃないが遠出はやめといたほうがいい」
今月第四話。
4月19日 13:00
冒険者ギルド総括会 ブィンド支部 一階 クエストボード前
「さて、どんなクエストがあるかな」
俺達はクエストボードに張り出されている多くのクエストを見比べながら選んでいた。
(ドロシー初の冒険者クエストだし。できればザ冒険みたいなものがよさそうだけど)
「確かこれまでは討伐クエストが多かったのよね」
「うす、討伐の方が腕も磨けるし素材も手に入るっすから」
「折角なら遠出するようなクエストがいいな~」
(遠出か。見たことがない景色、行ったことがない場所こそが冒険の醍醐味。しかし、その分危険は増すし今のドロシーの装備ではあまり遠くには連れて行きたくはないな)
「いや、今回は近場にしよう」
「え~、どうしてよ」
予想通りドロシーが不平を漏らした。
「それは今のドロシーの装備が心配なんすよ」
「あたしの?」
今のドロシーの装備は大きな杖にとんがり帽子と普通のローブだ。
杖とホウキはいいとしても防具はもう少しまともな物を揃えたい。帽子もローブもどちらともブロンズの物だ。
遠出するならシルバークラスの装備を揃えてから。
「え~、これじゃあだめ?」
「駄目じゃないが遠出はやめといたほうがいい」
マリナス商店で売られていたものは用途によって様々な種類があった。ゴールドクラスとまでは言わないがせめてシルバー級のローブと杖は揃えたい。
装備の問題と言うこともあり俺達はより報酬が良くて近場で冒険できるクエストを探した。
当然、自分達の身の丈に合ったものの中でだ。そんな都合がいいクエストなどなかなか見つかるものではない。
(これはしばらく討伐クエストしながらちょくちょく探すしかないかな)
「これはどう?なんか良さそうだけど」
ドロシーが手にしたクエストは調査系クエストだった。
内容はブィンド大洞窟の調査で依頼者はブィンドの役所からだった。報酬は調査した内容による。
(なるほど洞窟内の環境や魔物などを調査してレポートにして提出する形か。レポートは少しめんどくさいが調査の中で狩った魔物の素材はそのまま売っていいらしい。調査しながら魔物を狩れば案外早く金が稼げるかもしれない)
依頼者が役所なら報酬もそこまで悪くないはずだ。
(冒険と言えば冒険だな。場所もそこまで遠くないし。いいかもしれない)
長編になればなるほど矛盾点が生まれる
作者としてそれが1番怖い