第百九十一話 「それではパーティー更新申請承りました」
今月も最低ノルマの4話を投稿できました。
「ご存知だとは思いますが冒険者同士の喧嘩は禁止されています」
人ごみから出てきたパークさんは眼鏡に手を当てて、騒動の中心にいる俺と大男を睨んだ。
「っち、いや、喧嘩ってほどのものじゃないですよ。ただ少し話がこじれただけです。なぁお前ら」
大男は焦って早口で弁明しだした。仲間の二人も頷いてこの場を収めようとしている。
「だったらその斧と剣はなんだ。お前達は話がこじれただけで武器を抜くのか」
「いや、これは…」
もう手遅れだが大斧を急いで背中に隠す大男。
「…もういい、とりあえずこの場は双方収めろ。後で詳しい話を聞くからな」
「はい」
「わかりました。おい行くぞ」
大男はベールさんに軽く頭を下げ、仲間と共に人ごみをどかしながら出て行った。
争いごとがなくなり、さらに支部長達が現れたことで人だかりも散っていった。
「それじゃあ、俺達も…」
「そういうわけにはいかないな」
「ですよね~」
ベールさんにしっかりと肩を掴まれ、俺達は支部長室に連行された。
冒険者ギルド総括会 ブィンド支部 支部長室
俺はあの場であったあらましをベールさんとパークさんに話した。
「ったく、お前達はいつもトラブルを起こすな。それも今度はあのオルトロスと」
(そんなに俺達ってトラブルメーカーのイメージがあるのか。でも、相手は確かに悪かったな)
ギルドオルトロス、メンバーは約百人。ブィンドを拠点としているギルドで先のような柄が悪い冒険者が多く所属しているがギルドマスターであるエウリュ・カウバーンのカリスマ性で統率が取れており、ギルドとしての評判はそこまで悪くないらしい。
しかし、この町を拠点にしているギルドのメンバーに俺達は目を付けられた。今後仕事しづらくなるかもな。
「喧嘩を売るならせめて相手を見ろ」
「その前に争いごとは出来るだけ避けてくれれば私達としては大変助かりますね」
「すみません」
二人にこってりと叱られた。出来るだけ穏便に済ませようとしたのだけどな。
「まあ、でもこれ以上彼らも君達に近づかないだろう」
「?」
「冒険者の関係性はランクや所属だけではないという話だ」
支部長は今回厳重注意で済ましてくれた。部屋を出る前にパークさんからトラブルは出来るだけ避けるようにと再度釘を刺された。
「まったく朝からとんだ災難っすね」
「とりあえず、また同じことが起きないようにさっさとパーティー登録しよう」
「そうね、こんなことが起きるなら昨日しとけばよかったわ」
俺とジャックのパーティーにドロシーの名前を増やして受付に提出した。
「それではパーティー更新申請承りました」
これで正式にドロシーは俺達のパーティーに加入した。
もう年末…