第百八十九話 「んだてめぇ、邪魔してんじゃねえ!」
今月第二話。
4月17日 17:00
マザーステイスト
集合時間より少し早めに着いた俺はジャックが用意してくれていた席に案内された。サキさんに聞いたがジャックはドロシーを向かいに行ってくれているらしい。
(今日こそあまり飲まないようにしないと)
「お待たせっす」
少し待ってジャックとドロシーが合流した。
「おう、飲み物は先に頼んでおいたぞ。早速乾杯しよう」
「…それでは、新たな仲間ドロシーと俺達の中級冒険者昇格を祝って乾杯!」
新人殺しの賞金も貰ったし、今日はたらふく食うぞ。
その晩はあまり飲まずに済んだ。ジャックとドロシーに明日の朝に中央広場集合の約束をして、俺達は別れた。
4月18日 8:00
ブィンド 広場の噴水前
いつもよりは少し遅くに起きてしまった俺は急いで支度をして集合場所に向かった。
途中でジャックと遭遇し、二人で広場に向かった。
「ジャック、お前も寝坊か」
「そういうヒロシこそ」
こんなことならしっかりと時間を決めとくんだった。
広場に着くと噴水前に人だかりができていた。
「何すかね、あの人だかり」
「さあな、どこかの旅芸人がパフォーマンスをしているのかもな」
「ちょっと、離してよ。あたしにはもう決めているファミリアとパーティーがあるって言っているでしょ!」
人だかりの中心からドロシーの声がした。
「知っているよ。Eランク冒険者の野郎二人だろ。あんな奴らより俺達の方が十倍強いぜ、なあ、コルク」
「当たり前っしょ。あんな雑魚より俺達に付いた方があんたもいいってわかるっしょ」
どうやら誰かと揉めているようだ。ついでに相手は同業者らしい。俺とジャックは人だかりの中を少しずつ進んでいく。
(早くドロシーの元に行かないと危ない気がする)
「二人ともやめた方が…」
バチン
すごく響く音がした。それが平手打ちの音だと分かったのは人だかりを抜けてドロシーの姿が見えてからだった。
大斧を背負い、鉄鎧一式の装備を身にまとった肌黒の男性の頬が少し赤く腫れているのが見えた。
「てめぇ、人が下手に出ていれば、調子に乗るなよ!」
戦士風の男性がドロシーに手を上げようとする。
ガン
「危ねえ、まあまあ二人とも落ち着こうぜ」
俺はギリギリのところでドロシーと無精ひげ大男の間に割って入った。
「んだてめぇ、邪魔してんじゃねえ!」
拳を止められた男はさらに激昂し、こっちに拳が飛んできた。
(手を出したのはこちらだしな。ここは素直に受けとくか)
ゴン
拳を顔に受け数歩よろめいた。
(結構な威力だな、こいつ中々出来る。それにあの紋章。厄介な相手に絡まれたな)
素直に1発貰う。