第百八十八話 「それにしてもヒロシとジャックももう中級冒険者か。どのような二つ名がつくか楽しみじゃな」
今月第一話目。
ファミリア サンダーバード 自室
「はあ~、ちょっと休憩」
重い荷物を置き、装備を脱いだ。
自室で少し休んだ俺は喉が渇いたので水を取りに一階に降りた。
ガチャ、パンパン
「うわ!」
キッチンの扉を開いた瞬間銃声のような音が鳴った。俺は条件反射でその場に伏せた。
『Eランク昇格おめでとう!』
キッチンにはラウラさんをはじめブレーメンバンドの面々が揃っていた。
「皆さん!」
「やっぱり普通にお祝いした方が良かったじゃない。ヒロシ君驚いているわよ」
銃声のような音はパーティーグッズの物だったようだ。キッドさんとエースさんが悪戯顔でクラッカーのような物を持っていた。床には色鮮やかな紙テープが散らばっていた。
(この後の掃除が大変そうだ。この世界にもクラッカーとかあったんだな)
「すまない、ヒロシ」
ラウラさんが手を差し伸べてくれた。
「ありがとうございます。皆さんもう知っていたんですね」
(俺が降りてくるまでずっと待っていたのか。少し悪い気がしてきたな)
「まあな、実はヒロシ達の姿をギルドで見かけてのう。Eランク昇格の事はそこで知った」
「まあ、当然だけど―な。噂の新人殺しと巨体小鬼を倒してんだかーら」
新人殺しの事ももう知られていた。
「それで、一緒にいた女の子は誰なのよ」
「新しい仲間です。その事でケビンさんに話が合ったのですがケビンさん達は?」
ドロシー本人は同じファミリアに入るかどうかはまだ決めていないようだが一応ケビンさんに報告はしとこうと考えていた。
「ケビンさん達はクエストよ。帰ってくるにはもうしばらく掛かるって言っていたわ」
「それにしてもヒロシとジャックももう中級冒険者か。どのような二つ名がつくか楽しみじゃな」
中級冒険者になると冒険者ギルド総括会から二つ名を貰える。二つ名は称号のようなものでちょっとしたバフ効果を持っている。
例えばラウラさんの二つ名は大風の魔導士で効果は風魔法の威力の上昇。効果自体はあまり高くないらしく、ラウラさんが言うには少し後押ししてくれる感じらしい。
(まあ、有って困るものではない)
しかし、二つ名を貰えるのはもう少し後になるだろう。ギルドも冒険者一人一人に合った二つ名を決める必要があり、何よりも中級冒険者の数が多い。
中にはCランクになるまで決まらなかった者もいるらしい。
(別にすぐに欲しいわけでもないし、焦らず待てばいいや)
二つ名はおまけのような感じです。