第百八十七話 「ただいま」
今月第四話。
4月17日 13:00
「おー、そうかEランクから色変わるもんな」
中級冒険者になったことで冒険者カードの色がブロンズ色から銀色に変わった。
冒険者として成長した証みたいで嬉しい。
「うす」
ジャックは少年のように自分の冒険者カードを見つめていた。
「まあ、あたしは初めからシルバー色だけど」
「そうっすね。でも、初心者には変わりないんすから」
「さて、…ついでに登録もしようと思っていたが混んでいるな」
折角だし今、ドロシーのパーティー登録もしようと思ったがギルド内はかなり混み合っていた。
「うーん、登録は明日にした方がいいな」
(それに…)
「おい、あいつらが新人殺しを倒したらしいぜ」
「ああ、冬越し熊に続いてか」
あちらこちらから注目されている。噂が広がるの速すぎるだろ。
周りの奇妙な視線に耐えかねてドロシーは俺の後ろに隠れた。
(俺とジャックもまだ慣れないのだから。ドロシーにはきついかもしれない)
俺達はギルドを出て、とりあえず広場に向かった。
「さて、これからどうする?」
「そうっすね、とりあえず俺はおかみさん達に報告するっす」
「そっか、夜はそっちで打ち上げだな」
中級冒険者にもなったし賞金も貰った、今日はたらふく食うぞ。
「あたしは今夜の宿を探そうかな。おすすめの宿とか教えてくれると嬉しいのだけど」
しまった。ドロシーの今晩の宿の事をすっかり忘れていた。
(この時間から見つかるか)
「ファミリアにまだ空き部屋あるし、とりあえず今日はそこを使わせてもらおう。ケビンさん達もきっと了承してくれる」
宿屋がどうしてもいいなら明日から探せばいいし。ブィンドの案内もその時にすればいい。
「だめよ。まだファミリアの一員でもないし、それにあたしも冒険者よ。寝る場所くらい自分でどうにかするわ」
ドロシーはそのまま俺達から離れて行く。
「ちょっと待つっす。うちの近くに格安の宿屋があるっす」
ジャックはドロシーを追いかけ、ドロシーに見えない角度でこっちにグッドサインを送ってくれた。
(ドロシーはジャックに任せてよさそうだ。さて、俺もファミリアに戻るか)
ファミリア サンダーバード
ガチャ
「ただいま」
俺はドアを開け、ファミリアに入った。
(あれ?誰もいないのかな。先に自室に物を置いてこよ)
ドロシーは少しマイペースですね。