第百八十五話 「これで君達を呼んだ要件は以上だ。下に行って冒険者カードを貰ってくるといい」
今月第二話。
「ドロシー・セビュロスは高い魔力を持っており、実力はDランクに値すると言うのが試験官を務めたヴァローからの報告だ。ただし本人の意思を尊重し、なおかつ冒険初心者ということも踏まえてEランクにすることもできる」
「本当ですか!」
ドロシーは先ほどと打って変わって目をキラキラしてベールさんを見つめた。
「あ、ああ。ただ、理由を聞かせてもらえないか」
「それは…」
ドロシーはちらちらとこっちを見てきた。
(これは俺から話した方がいいな。しかし、ドロシーももう気にすることはないんだけどな。まさか、忘れているのか?)
「実は、ドロシーは俺達とパーティーを組む予定なんです。しかし、俺達がまだFランクだったのでDランクになってしまうとパーティーに入れないということを危惧していたと思います」
「ああ、なるほど。ただ、さっきヒロシとジャックはEランクに上がった。パーティーについては危惧することはないぞ」
支部長が話した通りで俺とジャックはEランクに昇格した。ドロシーがDランクになったとしてもパーティーは問題なく組める。
「え、そうなの!」
「はあ~、やっぱり忘れていたか。この前教えただろう同じパーティーを組めるのはランク差一つまでだ」
「それでどうするっすか?試験通りDランクのままにするっすか」
その場合、新米冒険者が一番高いランクのパーティーになってしまうがそれはそれで面白い。
「確かその場合は取れるクエストはパーティー内で一番高いランクが基準になるんですよね」
「そうだ。パーティーのランクは一番高い冒険者を基準とする」
そうなったら受けられるクエストもCからEになる。
しかし、これはドロシー自身が決める事だ。上がれる時に上がるのもいい判断だと思う。下級冒険者とは違い中級冒険者からはランクが上がりにくい。ポイントと実績両方を厳正に見極められ、実力がある者にしか昇格を許さない。
(EからDに上がるには少し時間が掛かるかもな)
「うーん。やっぱりヒロシ達と同じEランクでいいです。まだ冒険者の事もよく分かっていないし。ゆっくりランクを上げたいです」
「そうか、分かった。ではそう手配させとく」
「ありがとうございます」
「後はこれだな」
そう言ってベールさんは二つの袋をテーブルに置いた。袋には金貨がどっさり入っていた。
「新人殺しとその相棒巨体小鬼はそれぞれEランクの賞金首だ。ウォンテッドクエストのリストにもある。そしてこれがその賞金だ」
(巨体小鬼にってなんか矛盾した二つ名だな)
新人殺しと巨体小鬼の賞金は金貨十枚ずつだ。
「これで君達を呼んだ要件は以上だ。時間を取ったな。下に行って冒険者カードを受け取ってくるといい」
皆同じランクに収まりました。