第百八十四話 「ガハハ、構わん。話を戻すぞ」
今月1話目。
冒険者ギルド総括会 ブィンド支部 支部長室
「なるほどな。ここの四つの村が襲われたか」
支部長室に通された俺達はテーブルに地図を広げ、ベールさんとゴブリンの被害に遭った村々の状況を伝えた。
「はい」
コンコン
ドアをノックする音がして、秘書のパークさんが応対していた。職員から何かしらの資料を手渡されたパークさんはベールさんに何かを耳打ちする。
「…そうか、それでアレの方は?ほう、超えたか。うんうん、わかった」
話し終えたベールさんはニヤリと笑った。
「すまんな。話の途中で」
「いえいえ」
「さっきの報告でな。お前達が倒したのが新人殺しとその相棒巨大小鬼だと確認できた。Eランク冒険者の遺品である装備類もギルドから遺族に届けさせてもらう」
さらにベールさんは話を続けた。
「それで新人殺しとこれまでのクエストのポイントを鑑みてヒロシ・タナカとジャック・ビーン、両名の冒険者ランクをEランクに上げることとする。…今度は断らないよな」
「おー、よし!」
ジャックが隣で嬉しそうにガッツポーズを取っている。
(盾と片腕が折れたんだ。これくらいのサプライズあっていいよな)
「もちろんです。ありがとうございます」
「これでお前達も正式に中級冒険者の仲間入りだ。今後の活躍を期待しているぞ」
ギルドの支部長直々に言われるなんてあまりない事だろうな。ちょっと特別感があって嬉しい。
『はい!』
「それで、冒険者カードは持っているか?」
「ええ」
俺とジャックは冒険者カードをテーブルの上に置いた。
「リザ君」
「はい。少しの間預からせていただきます。おそらく、お帰りになる頃には返せると思います」
パークさんは俺達のカードを受け取り、部屋から退室した。
「それでだな。確かドロシー・セビュロスだったか。君の試験についてだが」
「はい」
「試験官であるヴァローからはぜひDランクと大小判を貰っているが…」
ベールさんの話を最後まで聞かずドロシーは割って入った。
「いやです。Eランクにしてください!」
「ドロシー、人の話は最後まで聞くっす」
ドロシーの無礼をジャックが注意した。気持ちは分かるが礼を欠いてはいけない。
「すみません」
「ガハハ、構わん。話を戻すぞ」
遂に中級冒険者へ。