外伝38 思い立ったが吉日それ以外は凶日
今月第三話。
4月15日 8:00
ジャックとヒロシがマンチキン村を旅立ってから約1時間後、私は起きた。鏡を見ると少し眼が腫れていた。
「おはよう、お父さん」
養父のヘンリーは玄関先で花の手入れをしていた。
「おはよう、ドロシー。朝ごはんならテーブルに置いてあるぞ」
テーブルには冷めないように蓋をされた朝ごはんが置かれていた。
「ありがとう。…彼らはもう行った?」
「ああ、先ほど皆に見送られて村を出たよ」
「…そう」
私が黙々と朝ごはんを食べているとヘンリーは手を止めてリビングに上がってきた。
「コフィ飲むかい?」
父はリビングを横切ってキッチンに向かい、カップを2つ取り出した。
「うん」
「はい、コフィ。熱いから気を付けるのじゃよ」
「フー、やっぱり父さんが入れたホットコフィは落ち着くわ」
父はコフィを手渡し私の向かい側に座った。
「…ドロシー、本気で冒険者を目指しているのだね」
少し間をおいてから父はゆっくりと確かめるように口にした。
「…ええ、いつか村を出て冒険者になるつもりよ」
「それは自分の生い立ちを調べるためか」
「!ゴホゴホ」
育ての親に核心を突かれ、飲んだコフィが気管に入ってしまい咳き込む。
「お前が気付いていることは知っておった、自分の容姿を気にして、魔法で変えていることも。それでもわしを父親と呼んでくれることは素直に嬉しい。そして、自分が何者なのかを知りたい気持ちも分かる」
父は確かめるように私の目をまっすぐに見ながら話を続けた。
「だが、冒険者は想像以上に過酷だ。外に出ればこれまで以上の危険に遭うかもしれない。その覚悟があるならわしはもう止めない。それに…彼らなら安心して任せられる。彼らは本来のお前の姿も受け入れてくるさ」
「お父さん」
「玄関先に旅に必要になるものを用意している。昔わしが使っていたもので悪いがまだ使えるはずじゃ」
父は玄関の方を指さした。そこには使い古された鞄が置いてあった。
「…でも、お父さん腰は…」
「わしの事は心配せんでもいい、こう見えても元冒険者じゃ。それに村の皆もおる。思った時が吉日、ほら旅立つ」
父は言いたいことを言った後私を玄関まで急き立てた。
「…それに今から追いかければ彼らに追いつくかもしれん。彼らはブィンドにあるファミリアに帰ると言っておった」
急き立てられた私は急いで荷物を持ち、家を出た。
「お父さん今まで育ててくれてありがとうございます」
「たまにでいい、手紙を送ってきなさい」
「はい。いってきます!」
赤い目からまた涙が零れ落ちる。
「いってらっしゃい」
旅たちは唐突に。