外伝36 現実を知らずんば夢しか語らず
少し短いですが今月4話目です。
ヒロシとジャックから少し離れた位置で炎の壁を維持しているドロシーは生まれて初めて本物の戦闘を目の当たりにしていた。村人同士の諍いなどではなく、命のやり取り。
「…これが冒険者」
現実を叩きつけられた感じがした。
(私が思い描いていたキラキラした冒険は本当に御伽噺の中だけのものだったのね)
ガンキンカンゴン
鉄と鉄が槍と剣が何度も交差する。両者決して譲ることはない、命の奪い合い。それは決して高上な戦いではない、泥臭く、ルール無用な殺し合い。
それでもドロシーの目には2人の冒険者が生き生きしている様に映った。死ぬかもしれないのにどれだけ傷ついても生にしがみつこうとする姿はとても美しく見えた。
「すごい。私も…」
(もうすぐ決着がつきそうだ。きっとあの2人なら生きて戻ってくる。私は出来ることで2人を支えよう)
「グオーーー」
絶叫と共に大きい方のゴブリンが崩れ落ちていく。
「ハアハア、ウォシャー!」
右手を突き上げ、勝者は雄叫びを上げ生者の権利を目一杯感じていた。
初めて見た現実は少し怖くて、気を保つだけで精一杯だった。でも、物語のような綺麗なものではなかったけど、冒険者になってすらいないけど私の最初の冒険はまだ始まってすらいないけど十分キラキラしている。
(うん、やっぱり冒険者になろう)
外伝が続いていますが次は本編になります。