第百六十六話「ジャック引きずってでも2人を村に帰せ!」
今月第一話。
オズの森
ゴブリンの集落はオズの森の中心辺りにあった。俺、ジャック、ブリキとドロシーの4人は茂みに隠れ、注意深く集落の様子を観察していた。集落の大きさ、ゴブリンの数、周辺の地形などを事細かにメモしていく。クエストで1番大切なのは情報収集だ。相手の事を知れば自ずと戦略も立てやすくなる。
(ホブもそこまでいないな、ライダーとシャーマンが厄介なくらいか。やっぱり、この集落でEランクパーティーが全滅するとは思えないな)
集落の状況を観察しているとブリキの横顔が見えた。ブリキは歯ぎしりし、ゴブリン達を睨みつけている。今にでも飛び出しそうな様子だ。
今出て行かれたらせっかく立てた作戦が水の泡になる。
「おい、頼むから飛び出すなよ」
俺はばれないように小声でブリキに釘を刺した。
「…わかっている」
「ならいいけど。…よし、欲しい情報は取れた。1度村に戻ろう」
ドロシーの方を見るとジャックにゴブリンの事をいろいろ聞いていた。
オズの森
「ヒロシどうっすか?」
帰り道ジャックが我慢できずに聞いてきた。俺の方に3人とも顔を向けてくる。
(それは皆気になるよな。特にドロシーとブリキは村の存続がかかっているし)
「作戦がうまくいけば多分大丈夫だ」
「!皆静かに屈め」
俺の指示に皆驚くがすぐに屈んでくれた。俺は屈んだまま前方を指さす、目の前にゴブリンを見つけた。距離にして20から30m、数は1人、武器は木製の槍だけだ。
難なく倒せるが万が一大声でも出されたら、集落から増援がくる。そうなってしまっては冒険者が村に来ている事がばれてしまう。
「ウォー!!!」
隣にいたブリキが斧を振り回しながらゴブリンに突っ込んでいった。
「あの、ばか」
「ギャー!」
急いで止めるが時すでに遅く、ゴブリンの叫びが森中に響いた。
ザン、ガン、ドン
ブリキは何度もゴブリンに斧を振った。
「もういいだろ、やめろ!もう…死んでいる」
「ハア、ハア、ハア」
ザクザク、カツカツ
集落の方が騒がしくなっている。先の奇声が集落の方にも聞こえたようだ。
「あんた何してくれているんすか!あんたのせいで…」
ジャックはブリキの胸ぐらを掴み、殴ろうとするが俺が止めた。
「やめろ、もう起きたことだ。それより、ゴブリンどもをどうにかする方が先決だ」
「どうするのよ。このままじゃあ囲まれるわよ」
「落ち着けドロシー大丈夫だ。ジャック、お前はドロシーとブリキを連れて村へ戻れ。殿は俺がする」
今の状況ならまだどうにかなる。
「いや、殿は俺にさせてくれ、自分の尻ぬぐいくらいできる」
「だめだ!ゴブリン1人に冷静になれないあんたを残しても死ぬだけだ。こんなところで華々しく散らせねぇぞ!」
俺の圧に臆してブリキは下がった。
「ジャック引きずってでも2人を村に帰せ!」
セロでのゴブリンは狡猾ですがそこまで強くないです。