第百六十五話「なんだと!」
今月最終話。
4月13日 7:00
宿屋 ウィンドミル 1階
「いや、朝ごはんまでごちそうになりましてありがとうございます」
朝から俺とジャックはヘンリーさんとドロシーの4人で食卓を囲んでいた。
「いえいえ、昨晩はドロシーがお世話になったようで」
「そうでもないっすよ。ただ俺達の大したことのない冒険話を話しただけっす」
「本当に大したことなかったわ」
ドロシーが冗談交じりに言った。
「おい」
俺は軽くつっこんだ。たった1晩で随分と仲良くなった。
「こら!ドロシー、お客様に失礼なことをいうものじゃない」
「いいですよ、いいですよ。本当の事なんでね。アハハハ」
準備を整え俺達は門前に向かった。
「それじゃあ、オズの森に向かうとするっす」
「待て、俺も付いていこう」
義勇団のリーダーであるブリキが声をかけてきた。しっかりと革鎧と斧で武装している。
「俺はオズの森の木こりだ、あの森の事は俺が1番知っている。森の案内をさせてくれ」
(案内はただの口実、本当はゴブリンの様子を自分の目で確かめたいってところか)
「案内役だったらあたしもできるわ」
見送りについてきたドロシーが手を上げ名乗りだした。
「ドロシー、何を言っているのじゃ、やめなさい。ただの村娘が危険な森に行くなんて」
親のヘンリーさんがすぐ止めに入った。
「あたしはただの村娘じゃないわ。ゴブリンが出る前は野草や薬草を拾いにあの森によく行っていたもの。それに父さんには秘密にしていたけどわたしこっそり魔物相手に戦う練習をしているの。自分の身くらい守れるわ」
(これは早めに収拾付けないと)
「分かりました、では4人で森に行くとしましょう」
「タナカさん!」
俺の提案にヘンリーさんは心配な顔でこちらを見た。
「大丈夫です。今回はただの下見だけですので直接ゴブリンと戦うことはありません。安心してください必ずドロシーを連れて戻ってきます」
「そうっす。絶対無事に戻ってくるっす」
「…わかりました。迷惑をおかけするかもしれませんが娘の事を頼みます」
俺とドロシーの説得で最終的にヘンリーさんは折れてくれた。
「ありがとうねヒロシ、父さんを説得してくれて」
オズの森に向かう道中ドロシーが礼を言ってきた。
「勘違いするな。2人より4人の方が正確な情報が取れると思ったからだ。自分で言った通りちゃんと自分の身は自分で守れよ」
「はーい」
「ブリキさんもそこはお願いしますよ」
後ろについてきているブリキにも念を押す。2人も荷物を抱えながらの戦闘は避けたい。
「言われなくてもそのつもりだ。何なら俺1人でゴブリンどもを倒してしままってもいいぞ」
「まったく、ゴブリンと戦ったことがない人は大きく出られていいっすね」
昨日の1件でジャックは村の義勇団、特にブリキをかなり嫌っているようだ。
「なんだと!」
ブリキとジャックの喧嘩はオズの森に着くまで続いた。
木こり、花屋の娘、騎士、忍者、ヘンテコパーティーの出来上がり。