第百六十四話「いえいえ、迷惑だなんて」
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ツインの三つ編みに茶色の瞳の女の子が奥から出てきた。
「あ、もしかして冒険者の方ですか」
黒髪の女の子は俺達の装備を見てから言った。
「はい」
「話は聞いています。どうぞ、部屋は2階にありますので案内しますね」
案内されるまま階段を上って、2階には部屋が4部屋あった。
「こちらの2部屋になります。何かありましたらお声がけください」
女の子は部屋の案内を済ませるとすぐに1階へ降りて行ってしまった。
(あまり快く思われていないのかな)
それもそうか村長から言われて予期していない客のために急いで部屋を準備させられたんだもんな。
とりあえず用意された部屋に入った。部屋には布団一式とランプ、小型のテーブルなど必要最低限の家具しか置かれていなかった。
(布団があるだけましか)
「どうするっすか」
「できるだけの事はしてみようと思う」
早速、俺とジャックはゴブリン討伐の作戦会議を開いた。これまで知った情報を考えるとあまり猶予はない。
「被害を考えると俺達が失敗した場合国もしくはDランク以上の冒険者の出番になるかもしれない」
被害はこれまでわかっているだけで村が4つ、Eランク冒険者が3人。クエストランクはギルドの判断で上げることが可能だ。たまに地形や近くにいる魔物が理由でクエストランクが上がることがある。
(Eランクパーティーが全滅したってことは…)
「集落に噂の新人殺しがいるかもしれないな」
「ありえるっすね」
コンコン
「はい」
ドアを開けるとご飯を乗せた丸盆を持っている宿屋の女の子がいた。
「あの、これよろしかったら」
「ありがとう、ありがたくいただくよ」
俺は晩御飯が乗っているお盆を受け取った。
「あの、出来ればこれまでのお2人の冒険聞いてもいいですか」
「…立ったままもどうだし。部屋に入るか?」
(この娘冒険者に興味あるのかな)
「はい!」
女の子は目を輝かせて部屋に入ってくる。
俺とジャックは晩御飯の野菜炒めと白米、卵スープを食べながらこれまでの冒険話を話した。とは言っても大した冒険話はない。
(よくよく思い返したら、俺達ほとんどベーテの森しか行っていないしな。つい最近王都には行ったけど)
話したのは冬越し熊との死闘やその後ベーテの森の魔物たちとの戦いと攻略程度だ。ちなみに女の子の名前はドロシーで親のヘンリーと2人で宿屋と花屋を営んでいるらしい。歳もジャックと同い年の16歳。
「ドロシーは冒険者に興味があるのか?」
「ええ、あたしも子供の頃に読んだ冒険譚のような冒険をいつかしてみたくって」
聞くところによると最近腰を悪くした父親が心配で村を離れないらしい。親戚のところに避難もせず父親と共に村に残ることを決意した。
コンコン
ドアを開けると温厚そうなおじいさんがいた。
「これドロシー、あまりお客様のお邪魔になってはいけないよ」
この人がヘンリーさんかな。見た感じ歳は孫と祖父程離れてそうだけどな。
「はーい」
「娘がご迷惑をおかけしてしまい申し訳ございません」
「いえいえ、迷惑だなんて」
ヘンリーさんは一礼した後ドロシーを連れて下に降りていった。
冒険に憧れるドロシーと心配性なヘンリーおじいさん。