外伝33 ドロシーログ
今月第4話。
物心つく前から村の外に憧れを持っていた。絵本で読んだ勇者や英雄の冒険に目を輝かせていた事を覚えている。魔法の素養がある事を知ってからは養父に気づかれないように森でこっそり冒険者のまねごとをした。
幼いころから養父に付き添い王都に花を売りに行っていた。時折買いに来てくれる冒険者さん達の冒険話を聞くのが好きだった。
最近になって村が騒々しくなった。村の近くにゴブリンの集落が見つかったからだ。周囲の村が襲われるたび、村から人が消えていく。養父は私を親戚の家に預けようとしたが私は拒んだ。捨て子だった私を今まで育ててくれた恩を返さずに去るなんてできなかった。それに何より養父が好きだから。
村の男性陣が義勇団を作って、村の周りに柵を置き武装し、ゴブリンの襲撃に備えている。私も義勇団に入ると言ったら養父に激怒された。しまいには喧嘩になり最近疎遠気味になっている。私だったらゴブリンなんて魔法で1撃なのに。なんでわかってくれないのだろう。
1週間前、Eランクの冒険者パーティーがゴブリン退治のために村を訪れた。大きなギルドに所属する彼らは自信満々にゴブリンなんてすぐに駆除すると豪語した。その晩彼らを村のみんなで手厚くもてなした。これで、もう安心だ。きっと冒険者さん達がすぐに退治してくれる。
しかし、数日しても彼らは帰ってこなかった。義勇団のリーダー、木こりのブリキさんが数人を連れて森に様子を見に行った。その結果、森で冒険者達の無残な姿が見つかった。その知らせを聞きまた人が減った。
今日、村に2人の冒険者が来た。彼らもゴブリンを倒しに来たらしい。遠目で見たが前に来た冒険者さん達の方が強そうだった。1人は私より背が低いしもう1人は弱気そう。それに聞くところによると2人ともFランクらしい。Eランク冒険者でも手が出ないのに、なんでこのクエストを受けたのだろう。でも、彼らも冒険してきたのかな。村の宿屋はもう私達がやっているところしか残っていない。きっと、今夜は私達に泊まるわ。時間があったら冒険の話でも聞いてみよ。
日記のような日記じゃないような外伝。