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現実逃避からの異世界冒険物語  作者: Piro
ドロシー・セビュロスとトリオ編
197/385

第百六十話 「うーん」

今月第一話。

 満天の星を眺めながら俺は話した。覚悟を決めたはずなのにまだ亜人種を殺すことに迷っていること。冒険者を続けていけば亜人種やヒューマンを殺すことに慣れてしまうのではないか。それが本当に正しいのか。こんなのに悩んでいる俺は冒険者に向いていないのではないか。思いのたけを正直そのまま打ち明けた。

「ジャックはなんともないのか?」

 つい無神経の言葉発してしまう。

「そんなわけないじゃないすか!俺だって嫌っすよ。ヒューマンや亜人種と戦うこと。でも、これは命のやり取りなんだと思うんす」

「命のやり取り?」

 そんな考え方したこともなかったな。

「俺もまだ難しいことはわからないすけど、簡単に弱肉強食の世界って言っても、納得できないじゃないすか」

「でも、命のやり取りだったならちょっと分かるような気がするんす。ゴブリン達だって別に殺したくて殺しているわけじゃないと思うんす。生きるために村人を襲って、奪っている。そして俺達は俺達が正しいと思うから戦った、役割や正義や誇り諸々を背負ってみんな生きているんす。日々戦っているんすよ」

「…」

(どちらかが悪ではなくて、どちらも生きているからこそ戦う。)

「それにきっとこういうのは慣れちゃいけないものだと思うんす。それに、殺す覚悟を持つ者は殺される覚悟も持ってなくてはいけないす」

「だったら…」

「背負うしかないんじゃないすか。一生背負って生きる。苦しくても重くてもそれしかないと思うんす」

 俺が答えを出す前にジャックは話した。

「でも1人じゃない…か」

 俺はジャックに振り向いた。ジャックは大きく頷いてくれた。

「そして、命のやり取り…か」

「話し合いで全て分かり合える…なんて傲慢すよ。誰にでも譲れない事がある。その時は戦うしかない、抗うしかない。それは冒険者じゃなくても、どんな職業でも変わらないす」

 確かに話し合いだけで解決できるという考え方は少し傲慢なのかもしれない。

「…まだ答えは出てこないけど、俺なりに命のやり取りについて考えてみるよ。自分が納得できるまで」

「話付き合ってくれてありがとうな」

 少しすっきりした気がする。胸の中にあった霧が晴れたかのようだ。

 もうすでに夜が明ける時間になっていた。

(これじゃあ大して眠れないな)

「どういたしましてっす」

俺は下に降りて、布団に入った。

まだ答えは出てないし、納得できないこともあるけど、今は少なくともこの村を襲ったゴブリンと戦える気がする。俺は自分の正義のために、村人の為にそして自分のために剣を振る。


「うーん」

 時間にしたら短い睡眠だと思うが、でもなぜかすごくすっきりした目覚めだった。

ヒロシは相談ばかりしている気がする。すぐ納得できることの方が少ない、それでも自分なりの答えを見つけ、進むしかない。

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