第百五十六話 「ここから南東に1キロにある草原が1番近いな。ちょうどその近くに村もある。今日はそこに泊まろう」
今月第二話。
レイジブルは10から20の群れで行動する魔物だ。クエストは3体討伐と書かれているが3体のみ倒すのは難しい。少し孤立した個体を各個撃退することも可能だが探す手間がかかる。やるなら群れごとの方がスマートだ。
「作戦はどうするすか?」
「そうだな、今回はトラップを仕掛けよう」
前に習得した罠アビリティを使ってみようと思う。何度か実験で使った事はあるが実戦で使うのは初めてだ。
アビリティ罠は狩人や猟師などのアビリティでその名前の通り罠を作成するアビリティだ。素早く罠を作成することが出来、罠の作成方法もレシピという形で教えてくれる。ただし、今のレベルは1で簡易なものしか作れない。
(今は落とし穴が作れるだけで十分だ)
落とし穴の作り方は知っているのでスキル想像力で瞬時に作れる。用意するものは落とし穴が作れる場所と穴にかぶせるシーツくらいだ。シーツの上に穴だとばれないように土を少し置いておく。
アビリティ罠とスキル想像力でレイジブル用の落とし穴を作成する。さすがに群れ全ては落ちないだろうが数体落ちれば十分だ。
離れたところに移動したジャックに合図を出し、レイジブルの群れを落とし穴の方へ誘導してもらう。当然、事前にジャックには落とし穴の場所は伝えてある。
ドコン
「モゥーーー!!!」
作戦通り群れの数体が落とし穴に落ちた。
「よし、ここでありったけの魔法をぶつける」
隠れていた茂みから出て、各属性の初級魔法を穴に落ちて身動きが取れないレイジブルに放った。
パキン、ドン、ブシャ
「モウーーー」
色鮮やかな閃光と共にレイジブルの悲鳴が聞こえた。
少し静かになるのを待ってから落とし穴の方へ近づいていく。穴に落ちたのは4体、4体とも魔法で倒れていた。
(これでクエストは完了だな)
穴に降りて倒したレイジブルを解体していく。
「よいしょっと」
「ハアハア」
穴から上がると息を切らしたジャックが戻ってきた。
「はあ、ヒロシひどいっす」
「ごめんごめん」
ジャックは作戦の邪魔にならないように残ったレイジブルの群れを少し離れた所まで誘導してくれていた。
「しかし、罠と魔法を使うとクエストもこんなに楽になるんすね」
(少しかわいそうだがこれがこの世界の現実だ。強き者は生き残り、弱き者は淘汰されていく)
「予想以上に早く終わったんでレッドボアも今日やるっすか」
「ああ、レッドボアの生息地でここから1番近いのは…」
俺は魔物図鑑Ⅰを取り出し、レッドボアのページを読む。
「ここから南東に1キロにある草原が1番近いな。ちょうどその近くに村もある。今日はそこに泊まろう」
アビリティ罠、ゲームみたいにレシピで作成方法がわかる仕様になってます。