第百五十四話 「ヒロシはヒロシすよ。何処の世界から来ていようが変わらないす」
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「ジャックその事なんだけどよ。実は俺隠していたことがあるんだ」
俺は覚悟を決めてゆっくりと話し始めた。
「俺本当は記憶喪失じゃないんだ。…ごめんな今まで騙していて。俺は異世界から来た。ある日女神らしきものに異世界転移させられた異世界人だ」
俺が真剣だという事を感じ取ったのかもしくは出鱈目な話過ぎてあきれているのか、ジャックは黙って俺の話を聞いてくれた。
「…それはまじすか」
数秒の間があって、ジャックが口を開いた。
「ああ、本当の事だ。今度こそ噓偽りない」
(突然こんな話されたらそれは驚きもするよな。いや本当にこんなバカげた話を信じてくれるのか)
「そうっすか。まあ、ヒロシが何か隠している事は薄々気付いていたっす。でも、打ち明けてくれてありがとうっす。…それじゃあ、俺は先に寝させていただくっすよ」
ジャックは立ち上がりテントに向かって行く。
「え!それだけかよ」
俺はジャックの薄いリアクションについ慣れないつっこみをした。
「ん、それだけってまだあるんすか」
「いや、ないけど。まず信じてくれるのかこんなバカげた話」
「うーん。魔法については詳しくないし異世界転移なんて聞いたことすらないっすけど、召喚魔法とかもあるからヒロシの世界がどんな所かは分からないすけど、そこまで奇想天外じゃないすよ」
(それはそうだけど。それでももっとなんかあるだろう)
「俺はこの世界の住人じゃないんだぞ。それに俺は今までずっと嘘をついていたんだ、記憶喪失って」
「そうっすね、嘘は駄目っすね。でも、それは秘密を守る、自分を守るためのものじゃないすか。突然異世界連れてかれて、家族や友人と離れ離れになって恐れない人はいないと思うんす。それがどれだけ心細かったか、俺には想像できないっす。自分1人違う異世界に行き着いて、自分の身を守るのは並大抵な事じゃないと思うっす。嘘の1つや2つ吐いたからと言って誰も責めないと思うっすよ」
(なんだろうこの世界に来て、いろんな事があって、色々な人に助けられて、死にそうにもなったけど。今本当の意味で救われた気がした)
「ちょっと、泣く事すか」
涙が流れていることに俺より先にジャックが気付いた。涙がポロポロと零れ落ちていく。
「ヒロシはヒロシすよ。何処の世界から来ていようが変わらないす」
(ありがとうジャック)
やっと話せた。