第百四十四話 「大丈夫お前は十分強い!」
今月第二話。
コンコン
早朝、ドアのノック音で目が覚めた。
(誰だ?こんな早くに)
初めに思いついたのはジャックだ。あいつこの前も早朝に新聞を持って入ってきたからな。
「ふはぁーい」
寝起きのかすれた声で俺は返事した。
ドアを開けるとそこには宿屋の主人ショーンさんがいた。
「おう、おはよう。ヒロシとジャック宛に手紙が届いていたぞ」
「ありがとうございます」
(俺とジャックに手紙?誰からだろ差出人は?)
以前にも話したがセロでの交信手段は手紙が主流だ。ただし郵便局みたいな会社はない。基本的に手紙や荷物の配達はギルドが行っている。一応クエスト扱いになり、距離と配達地域、期限などを考えてランクが決まる。俺達はまだやった事がないがコツを掴めば割のいいクエストらしい。
依頼者は手紙をギルドに預け、冒険者が配達をする。配達地域近辺のギルドか直接相手の住所に荷物を届ける事が出来る。
差出人を見た俺は手紙を開けた。差出人の欄にはマリナス商会代表マリナス・カリエッジと書かれていた。
(マリナスさんが俺達に手紙をよこすなんて何の用事だろ)
内容は折角王都に来られたのなら、時間がある際にマリナス商店の本店へお越しくださいといった招待の手紙だった。
(そういえば、ジャックの騎士試験で王都に行くって話したっけ。律儀に招待しなくてもいいのに)
俺は手紙を持って隣のジャックの部屋に向かう。
コンコン
「どうしたんすか?」
寝起きのジャックに手紙の内容を伝えた。
「どうする?準備に忙しいなら試験後に行くでもいいけど」
「そうすね。試験後の方がありがたいかもっす」
「分かった。それじゃあ試験後の翌日結果発表見てから行こう」
それから騎士試験の数日は各々好きなように過ごした。ほとんどの日を俺は図書館で過ごした。気になるものを片っ端から読んだ。一般的な事から冒険者に必要な情報、神話や都市伝説に至るまで数多くの書物を読み漁った。まだレベル1の書物しか読めないが俺にとっては十分だ。おかげで大分この世界の事が知れた。
(それでも帰る方法はまだ分からないけど)
4月7日 8:00
「忘れ物はないだろうな」
俺は朝学校へ向かう母親みたいなことを言う。
「大丈夫すよ。何度も確認したっす」
そう言っているジャックの足は少し震えていた。
(緊張…しないわけないか)
バン
「うわ!何するんすか」
緊張を吹き飛ばすため俺は思いっきりジャックの背中を叩く。鎧のせいで叩いた俺の方にも痛みがきた。
「大丈夫お前は十分強い!」
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