第百四十一話 『!』
今月6話目。
「何わけの分からない事言ってんだ!」
チンピラの剣を軽く避け、壁を数歩走る。
壁走りは脚力レベル3になって出来る様になった。ジャックとの戦いで見せた三角飛びも壁走りの応用技だ。
こちらに顔を向けるチンピラの顔面に右ひざを入れ倒す。鼻は確実に折れ、痛みで暫く立てないだろ。
「ぎゃあー」
最後のチンピラが俺の斜め右から剣を振ってくるのが見える。一般的に死角になるのだろうが、アビリティイーグルアイで視野が広くなっている俺にはほとんど死角がない。チンピラの剣を短刀で受け流し横顔に左フックをお見舞いした。
「グヘ」
チンピラが伸びているのを確認して棒立ちでぽかんと口を開けている女の子の方へ向かう。
「大丈夫か?」
「え、ええ」
ローブで顔は見えないが、10代前半の女の子の声だ。
「昼でも女の子が1人で路地裏を通るのは危ない。これからは出来るだけ大通りを通れよ」
(どこかの貴族のご令嬢がお忍びで遊びに来たって所か。このまま放っておくとまたチンピラに絡まれるかもしれないし。大通りまで連れていくか)
バサ
「きゃ!」
女の子の手を引こうとした時突風が吹いた。風でローブが外れ女の子の顔が現れる。ぱっちりとした青い目にきめの細かい白い肌まるで人形みたいな顔立ち。風でツインテールの金髪がなびく。
「!」
ローブを慌てて被りなおす女の子。
「大丈夫か?」
「え!あ、うん」
後に気配がする。チンピラの1人だろう。確か足にナイフが刺さっている方はまだ動けそうだったな。
「!」
女の子もチンピラに気付いたようだ。
俺は短刀を握り、振り向きざまにチンピラを斬ろうとする。だが、その必要な無かった。
ドサ
振り向いた時にはチンピラは白目をむき地面に倒れていた。チンピラの代わりに赤髪の男性が立っていた。こちらも茶色のローブを着ている。
(何だ!王都じゃあローブが流行っているのか?)
「困ります。イリス様1人で勝手に外に出ていかれては」
俺の事は目向きもせず、腰に西洋剣を携えた男性は俺の後ろにいる女の子に声をかける。
(こいつ、索敵に引っかからなかった。何者だ?ただ者じゃあない。でも、女の子の知り合いの様だな)
「エリウッド!き、奇遇ね。こんな所で出会うなんて」
「!イ・様私の名・は・せてく・さい。正・がば・ます」
「だっ・、私の名・も伏・てよ!」
「あ!申し・あ・せん」
何か2人でこそこそと話をしている。
「へえー。エリウッドさんにイリスちゃんって言うのか。2人共知り合いみたいだしもう大丈夫そうだな」
『!』
新キャラクター、イリスとエリウッドが登場。2人共重要キャラクターです。