第百四十話 「何わけの分からない事言ってんだ!」
今月5話。
王都に来た初日に見た白亜の城の名称はシャルル城。シャルル王国国王の居城には王族とその使用人達が住んでいる。シャルル王国の政の中心にして戦時には堅牢堅固の防衛拠点に変わる。
(図書館で読んだ歴史書では建国してから今まで王都まで戦火に遭った事はないそうだが)
近くで見るとより一層城の美観に驚かされる。芸術的であると同時に実戦的でもある。
(この城を設計した建築家は天才だな。城内からは王都が一望できるんだろうな)
城の周りには堀があり、水が張られている。城門近くに上げられている橋が見える。中にいる者が外出する際や訪問者が来た時は渡れるように降ろされるのだろう。
(でも、王族しか知らない避難経路とかあるかもな。アニメや漫画ではよくお忍びで王族が城下町に訪れたりするけど、実際どうなんだろ?)
俺は散策中に買ったアイスに似た氷菓子を食べながらのんびりとシャルル城の近くに来ていた。
(さて、城も見たしこれからどうしようかな。宿屋に帰るには早すぎる時間だな。ジャックの騎士試験が行われる教会にでも行ってみるか)
図書館と城がこれだけすごいんだ。王都の教会もさぞ素晴らしいのだろう。
氷菓子を食べ終え近くのごみ箱にごみを捨て、教会の方に歩を進める。
ゴミがちゃんとゴミ箱に入ったか確かめていた横目に路地でチンピラに口を塞がれ今にも襲われそうになっている黒のローブを着た女の子の姿が見えた。
「ッチ」
このまま放っておく事も出来るが、それで明日の朝刊に事件として載っていたら流石に目覚めが悪い。
(もうあの時の俺じゃない)
路地に入りエクストラポケットから投げナイフを抜きチンピラの足めがけて投げる。
(人数は3人。よし、まだどうにかできる数だな。装備を見るにそこまでレベルが高そうにも見えない)
ザク
「グワアア!」
足に投げナイフが刺さり地面に転がるチンピラ。おかげで女の子の口から手が離れ、拘束も解かれる。
「誰だてめえ!」
仲間のチンピラ2人は各々剣を抜き俺を睨んだ。
(たく、王都でも路地は危ないな)
「手前らこそ白昼堂々何やってんだ?大の男が寄って集って女の子に手を上げるって。ったくこの世界のチンピラは3人1組のルールにでも縛られているのか?」
「グチグチと何わけの分からない事言ってんだ!」
チンピラの1人が大振りで襲ってくる。
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