第百三十八話 「!!!」
今月第三話。
ジャックがファミリアサンダーバードに入り、頻繁にうちに来るようになってから何度かジャックと手合わせする事があった。勝敗はまったくの五分。俺がスピードや投擲などで攪乱しても、ジャックはその全てをガードする。俺も負けじと新しい戦法を考えて、ジャックの守備を崩す。でも次の日にはジャックは適応している。俺とジャックの手合わせはその応酬だ。互いに競って高め合う。
(いい仲間でありライバルでもある。どっかの忍者系漫画でありそうな関係だな)
「うし、準備出来たっすよ」
軽くストレッチを終えたジャックは盾と片手直剣を構える。
もちろん手合わせだから寸止め、投げ物なども今回は無しにした。その代わりと言っては何だが距離をいつもより空けてある。ジャックは俺のいる位置から100mくらい離れた場所にいる。
「こっちも準備完了だ。それじゃあいつも通り投げた石が地面に落ちたら始めな」
コクリとジャックがうなずく。近くで拾った石を俺は空中に投げる。
コト
数秒後石が地面に落ちた。俺とジャックはほぼ同時に動く、ジャックは真っ直ぐ俺の方へ俺は逆にさらに距離を空けるためバックする。今回投げ物は無いが直前に見せた魔法はありだ。この手合わせはつい先ほど発動した魔法が戦闘でどれだけ使えるか試すためでもある。当然ジャックもそこは理解しているから俺が魔法を発動させる前に距離を詰めに来ている。
先ほど放った感覚を思い出し魔法を発動する。
「!」
(思ったよりジャックの動きが早い。この距離で発動すると俺までダメージを負ってしまう)
「ッチ」
俺は魔法発動を止め、短刀を抜く。
ガッカカンキン
ジャックの剣と俺の短刀がぶつかる。左足でジャックの盾を蹴り、距離を取る。
ドッ
構わず距離を詰めに来るジャック。直剣を避け、俺はジャックの右横の木を蹴り背後を取った。
(よし、もらった)
ブオン
だが、横からジャックの左腕と盾が見えた。
(な!)
後退しギリギリで躱す。バックした勢いと共にさらに数歩後退し距離を取る。
(おいおいマジか。前回見せた三角飛びをもう対処するのかよ)
魔法も使い物にならない、投げ物も使えない。完全にジャックのペースだ。だが、俺もこのまま何もせずに負けたくはない。
(距離は6,7歩くらいか。ギリギリ使えるな)
トントン
靴を合わせる様に右足のつま先を地面に軽く当てる。
(電光石火!)
ズッザザザザ
今自分の出せえる最速でジャックの懐に入る。
「!!!」
(流石にこれはまだ対処できてないだろ!)
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