第百三十七話 「確かめたい事も確かめたし、折角だ。ジャック久々に手合わせしねえか」
今月第二話。
4月3日 9:00
王都シャルティアから西にある森
「で、何でお前までいるんだよ、ジャック」
昨日習得した魔法適性(全)を試すために朝早くから外出したのだが、何故かジャックもついて来た。
(別についてきてもいいけど。出来れば試し終えた後に伝えたかった)
「いやー。俺も勉強に飽きちゃって、ちょっと外出たかったんすよね」
俺もジャックも当然完全装備だ。外に出れば何が起きるか分からないからな。
「で、ヒロシは何でここに来たんすか?」
「場所は関係ないよ。あまり人目につかず、少し暴れても大丈夫な所だったらな」
俺は軽くストレッチしながら答える。
「?」
「もう教えてもいいかな。昨日新しいアビリティを覚えてな。今日はその練習に来たんだよ」
ストレッチを終え、辺りを見回す。
(丁度いい的ないかな。そこらの木でいいか)
「新しいアビリティ?」
「ああ。少し離れてもらえるか。いまから見せるから」
目を閉じ体内にある魔素を意識する。
(以前にラウラさんが魔法は想像力が大切だって言っていたな)
魔法適性(全)は全ての属性に適性があることを示す。ただ、全てとはどこまでなのかはわからない。
昨晩考えたがおそらく“全”は俺が知りえる属性の事だと思う。
(まあ、ここらは後々試していけばいいだろう)
とりあえず、ありそうな属性を10個ほどイメージする。少しずつ体内にある魔素に変化が感じられる。
「よし」
変化した魔素を体の周りに出すイメージで放出した。
体の周りに10個のバレーボールくらいの球体が浮かんだ。それぞれ属性によって色や性質が違うようだ。体内にあった魔素が一気に減っていくのが感じられる。
「!」
少し離れている所で口を開けているまぬけ顔のジャックが見えた。
目の前の木に魔法を放つ。
ドガガッガガガガガ
10個の球体が連続に当たり、木はぽっきりと折れた。
(威力はまあまあか。いろんな属性が使えるのはいいな)
想像したのは炎、水、土、風、木、雷、氷、鉄、砂、音の10種類の属性。どれもアニメや漫画の世界ではありふれたものだ。
この他の属性も扱えるはずだが、今はこの10個で十分だろう。魔法について調べていけば自ずと増えていくだろう。
「な、なんすか今の。魔法…すよね」
少し経ってジャックが駆け寄る。
「ああ。昨日習得した」
「習得したって、まじすか」
「確かめたい事も確かめたし、折角だ。ジャック久々に手合わせしねえか」
ついに魔法発動しました。