第百三十六話 「!」
今月で今年も終わり。
4月2日 20:00
俺はベッドに仰向けで横になる。天井を見つめてかれこれ10分は経っていた。
「はあー」
自分の中の苛立つ気持ちを深い溜息と共に吐き出す。
(ここ2日調べて新たな事を知っても、元居た世界に帰る術に関しては何も進展していない)
この苛立ちの正体、それはどれだけ調べても帰れないのではないかという不安。転移者の前例かもしれない勇者はこの世界でその生涯を終えた。
「くそ」
(多分今俺が調べられる範囲はここらへんが限界だろう。これ以上は地位を上げるしかない。とりあえず冒険者ランクを上げるか。後は見込みがあるのは魔法か)
可能性があったのはこの2種類。
召喚魔法:近い異世界もしくはセロから魔導士が魔物や物質を呼ぶ魔法。異世界から呼び寄せる点においては空間魔法に似ているが呼び出す世界に魔導士がいなければ意味がない。
空間魔法:物質や魔物を移動させる事が出来る魔法。おそらく女神が俺をセロに転移させたのはこの魔法だ。しかし、異世界間の転移は神クラスしか発動できない。
そろそろセロに来て1年が経つ。これまであえて魔法アビリティは習得していなかったが、そろそろ魔法にも手を出してみてもいいかもしれない。
「ステータス」
ステータス画面を開き、魔法アビリティを探す。セロでは魔法を扱うにはまずアビリティ魔法適性を習得しなければいけない。魔法適正は名前の通り自身の魔法の適性を表す。例えば、魔法適性(風)が出ればその者には風初級魔法が扱えるようになる。治癒魔法や他の魔法は魔法適性を獲得した後に適性に応じてアビリティ一覧に現れるらしい。
逆に言えばアビリティ一覧に魔法適性が出ない場合は魔法が扱えない事を指す。こればかりは天賦の才があるかどうかに起因する。魔導士であるラウラさんやミャオさんはもちろん、僧侶であるエイラさんも魔法適性を習得している。
アビリティ魔法適性に残ったレベルポイントを使った。
(さて俺にはどんな適性があるんだろう)
ステータス画面で習得したアビリティ一覧を確認する。
「!」
習得したアビリティ一覧の中に魔法適性(全)が記されていた。
(全ってどういう事だよ。いやスキル変り者の影響でこうなったって事か)
魔法適性(全):全ての属性の初級魔法を扱える。
(まじか。全てってなんだよ)
先ほどの苛立ちはどこかに吹き飛んでいき、今は魔法の事しか頭にない。
(これで少しは可能性が広がるかもしれない。明日は外に出て試してみるか)
ついにファンタジーの代名詞魔法が使えます。