第百三十四話 「了解っす」2
今月6話目。
シャルル王国王都シャルティア、面積は約100平方キロメートル、人口約200万人、王都周辺の町や村を含めば約1200万人が住んでいる。シャルル王国最大の都市であり、政治、文化、経済の中心地でもある。
(確かマリナス商店の本店もここにあるんだっけ)
その広大な市街地を俺の相棒、ジャック・ビーンは朝から走り込んでいる。
(道に迷わなければいいけど)
10数分後
バタン
流石にそこまでドジではないらしい。後ろを振り向くと息を切らしたジャックが戻ってきていた。
「はあ、はあ。あ、ありがとうっす。ングング」
「ったく、どこまで走ってきたんだよ」
俺は呆れながら息を切らして部屋に入ってきたジャックに水が入ったカップを手渡す。
「それで…ヒロシは今日どうするんすか?」
「ん?今日も図書館に行こうと思っているけど」
「そうすか。何か役に立つようなもの見つかったすか?」
ジャックには記憶喪失について調べていると伝えている。
「まあ…ぼちぼちかな。それよりジャックは登録終わったのか?」
「ばっちりっす。準備もほとんど終わっているっす。後は筆記試験についての予習くらいっすね。それも大体終えているすけど」
ジャックはちゃらい見た目の割に頭がいい。昨年も筆記試験は高得点を取っていたようだ。
「だから今日は俺も図書館行こうかなって」
「そうか。ジャック朝飯は?」
「俺は食べ終わってるっす」
「んじゃあ俺は朝飯食ったら行くから、先に行ってていいぞ」
「了解っす」
4月2日 10:30
シャルル王国国立図書館
(とりあえず昨日読み終えた本は返しとくか)
1階の受付に返却スペースがあったのでそこに本を返した。
(ジャックは多分2階で勉強しているだろう。わざわざ同じ席じゃなくてもいいか)
俺は2階に行き、調べものの続きをする。
転移魔法:空間魔法の1種。魔物や物質を他空間に移動させる。
召喚魔法:異世界もしくはセロから契約した魔物や物質を呼び出す魔法。呼び出したものは召喚獣と呼ばれる。
(なるほど。やはり俺は転移魔法でこの世界に来たらしいな。そして帰るにも転移魔法が必要になる)
理由は簡単で召喚魔法だとセロから俺を召喚することになるがここに転移した時周辺には誰もいなかった。
(一応、ケビンさん達とホワイトバックが居たが両者とも違う)
それにあの女神が召喚主なら召喚時地球ではなくセロにいるはずだ。だが、確かにあの女神は転移の瞬間まで地球にいた。
(俺が寝ぼけていなければの話だが)
それに召喚魔法の場合戻る時地球の誰かに呼び出される必要がある。俺の知る限り地球に魔法使いはいない。それに、あの女神が召喚主なら契約のあとがどこかにあるはずだがそのような類のものはない。
(誰かの召喚獣になるのも嫌だし)
という事はこの世界で女神を見つけ、もう1度転移魔法を使ってもらい元居た世界に戻る。
(覚悟はしていたけど簡単には進展しないな)
約1000年前にこの世界に呼び出された勇者は最後帰れたのだろうか。次は勇者関連の事も調べてみるか。
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女神に出会える日はいつになるやら。