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現実逃避からの異世界冒険物語  作者: Piro
現実逃避からの異世界転移編
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第十話 「はい!新米ですけど一生懸命頑張ります。」

今回は少し長いです。

「かんぱーい。」

 ケビンさんの挨拶で宴が始まった。

「うん。やっぱりブィンド酒はうまいな。」

 ケビンさんは木製ジョッキを口に運び、ブィンド酒をグビグビ飲む。

 ブィンド酒というのはここ水の都ブィンドで作られた地酒である。ちなみに俺が異世界から転移した国はシャルル王国といって、西大陸北東に位置する国だ。その、第2都市であるブィンドにサンダーバードの本拠地がある。1国の第2都市という事もあり、ブィンドは結構な大都市だ。整った石畳の道と町並みは中世ヨーロッパ感がある。俗にいえば異世界アニメとかでよく見る風景。

「とりあえず。自己紹介から始めるか。」

 ルイスさんが軽い感じで言った。

「そうであるな。裕君はまだ、拙者たちの事はあまり知らないでござろう。」

 和服姿のリシンさんは期待通りの侍口調で話した。

(この世界にも日本のような場所があるのだろうか?)

「ふむ。なら私、ケビン・スノーマンから始めよう。ファミリアサンダーバードの長でありパーティーライオンハートのリーダーも務めている。職業は戦士だ。よろしく頼む。」

 ケビンさんが渋い声で自己紹介を始める。

「んじゃ、次は俺かなー、どうもルイス・レビィでーす。ケビンと同じくパーティー ライオンハートのメンバーで吟遊詩人をしてます。歳は27で、好きなタイプはお姉さん系、嫌いなタイプは…」

「ミャオ・リデルよ。ケビンと同じくライオンハートの所属よ。職業は魔導士。よろしくね。」

 ミャオさんがルイスさんの話を遮りながら話した。ちなみに自己紹介はケビンさんから時計回りで進行している。

「拙者はリシン・アルベールでござる。ライオンハートに所属している侍でござる。宜しくお願いいたす。」

 リシンさんが淡々と自己紹介した。

「私達の事は知ってると思うけど、一応紹介するわね。私はラウラ・バークドック。ミャオさんと同じで魔導士よ。そして、パーティーブレーメンバンドのリーダーなの。」

「エイラ・ステレイキャットよ。今は事情があって冒険者業は休んでるけど、ラウラ達と同じブレーメンバンドのメンバーで、僧侶をしていたわ。治療魔法が使えるから、けがしたら遠慮なく言ってね。」

「ガブガブ。ん!俺の番かー。エース・チキンナゲットーだ。ブレーメンバンド所属の冒険者だーよ。職業は剣士だーよ。」

 エースさんがペグンの丸焼きを食べながら話した。

「こほん!わしの番だな。キッド・グレイドンキーだ。エースたちと同じでブレーメンバンドのメンバーで、職業は拳闘士だ。」

 隣に座ってるキッドさんがすごく大きな声で自己紹介した。

(この人体格は大きいし、声もでかいんだよなー。両腕に変なタトゥー入ってるし最初はちょっと近寄りがたいと思ってたけど、話してみると案外優しいんだよな。俺の番が来た。)

「最後に俺ですね。裕・田中です。記憶喪失であまり自分の事分からないですけど。よろしくお願いします。」

パチパチ

 なぜか俺の自己紹介の時だけ拍手があった。ちょっと恥ずかしい。

 サンダーバードの皆には自分の状況は記憶喪失と説明してある。いきなり、異世界転移なんて説明しても多分信じてもらえないと思ったからだ。自分でもいろいろ調べたけど、やっぱり異世界転移の詳細は見つからなかった。分かったのは生物を違う世界から転移させるにはとんでもなく大変で、神レベルじゃないと出来ないらしいって事だけだ。いずれ話せる機会が出来れば本当の事を皆に話そうと思っている。


 宴はとても楽しかった。ごちそうが並び皆飲んで食っての大騒ぎだった。俺はアルコール系は飲まないので果実ジュースを飲んでいた。


 宴が落ち着いた頃

「どうだ。楽しんでいるか?」

 俺が食べ疲れて少し休んでいる時ににケビンさんが話しかけてきた。他の皆はリビングでくつろいだり、まだ飲み足りない人は庭で酒を持っていき飲んでいた。今キッチンにあるディナーテーブルには俺とケビンさんしか座ってない「はい。楽しんでます。」

「それは良かった。ここでの生活は慣れたか?」

「はい。慣れました皆さん良くしてくれます。」

「あのー。まだちゃんと言ってませんでしたけど、あの時は助けていただきありがとうございました。」

 俺はしっかりとケビンさんの目を見て半年前に助けてもらったお礼を言った。あの時は言葉が通じなかったが、俺は通じる時になったらきちんと礼を言いたいと思っていた。

(ケビンさんは俺の命の恩人だから。)

「どういたしまして。だが、礼はあの時に言ってたんじゃないか。」

「え!言葉通じてなかったんですよね?」

「言葉が通じなくてもそれくらい目を見ればわかるよ。」

 そう言ってケビンさんが俺の顔をじっと見た。

「な、なんですか。」

 俺はとっさに目を逸らす。

「いや、すまない。やはりいい目をしてるなと思ってな。これは私のじろんだがな、いい目をした人には悪い奴はいない。」

「それで、ここでの生活にも慣れて裕君はこれからどうしたいんだ?」

「これからですか。…」

 俺は俯き、少し考える。正直このままここで世話になるわけにはいかないと思ってたし、したい事もある。でも、それをこの人達に言って了承してくれるかは分からない。

「勘違いしないでほしい。私達は別に君の事を迷惑だとは思っていない。だが、このままずっとここで雑用をするのはどうかとも思っている。だから、君の意思を聞いてみたかった。何か考えがあるなら聞かせてほしい。」

 俯いた俺に気を遣ってケビンさんはやさしく話した。

(ここの人達ってなんでこんなにやさしいんだろう。見ず知らずの俺を助け、家に招き、そしていろんな事を教えてくれた。)

「実は…俺、冒険者になりたいです!いろんな所に行ったら記憶も戻るんじゃないかって思って。」

 俺は少し大きい声で言った。

「…そうか。わかった。」

 ケビンさんは少し考えてそう言った。

「あのそれで、差しでがましいんですけど、俺をファミリア サンダーバードに入れてもらえないでしょうか。」

 俺は立ち上がり頭を下げ、お願いする。

「いいのか、うちで。」

「はい。新米ですけど一生懸命頑張ります。」

 俺はもう一度頭を下げた。

後でキャラクター表も載せます。

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