第百二十九話 「とりあえず、少し休も。腰が痛い」
今月1話目。
西大陸北東に位置するヒューマンの国、シャルル王国の歴史は古く。もうすぐ建国から500年がたつ。総人口約6000万人、公用語は西大陸語が使われ国のエンブレムには国獣であるペガサスが描かれている。その王都シャルティアは活気溢れる都だ。大通りの人通りに俺達はもまれながら宿屋を探している。
(半端ない人の量だな。第2都市のブィンドよりすげえ)
「あ、あったす」
前に進んでいるジャックが1つの建物の前で立ち止まった。
「ここが?」
「うす。おかみさんに教えてもらった宿屋っす」
建物のドアの上部分に宿屋ミモアと書かれている看板がある。
カランカラン
「いらっしゃいませ」
ドアを開けると受付のカウンターに少し肌が焼けていて、ガタイがいい男性が見えた。
「あの、俺達マザーステイストのテリーさんのご紹介で来たんですけど」
「ああ、テリーの。じゃあ君がジャック君で」
テリーはマザーステイストのおかみさんの本名だ。
「あ、俺がヒロシです」
「話は聞いているよ。俺は従姉弟のショーン。よろしく」
ぱっつんぱっつんの青いチュニックを着た男性と握手を交わす。きりっとした目に白い歯、彫が深い顔。両腕しか鍛えていないのか腕が異常に太い。
「確か騎士試験の為に来たんだってね。要望通り2部屋取ってあるよ。朝と夜の2食付きで1泊銀貨1枚」
騎士試験でシャルティアに訪れる客が多いこの時にこの値段は格安だ。かき入れ時に従姉弟の知り合いに2部屋も開けてくれたのはこの人の優しさだろう。
ちなみに2部屋取ったのはジャックの試験準備を邪魔しないためだ。
「ありがとうございます」
俺とジャックは宿泊予定の11日分の宿泊費を出した。
今日から試験が終わる10日まで宿泊して、11日の試験結果を見た後ブィンドに戻る予定だ。
「それじゃあ。部屋に案内しよう」
2階にある俺とジャックの部屋は隣り合わせだった。
宿屋ミモアは3階建てで木造の建物だ。1階に食堂と従業員の部屋などがあった。
「飯は朝が7から10時までで夜は5時から10時までになっている。もしわからない事があったら気軽に聞いてくれ」
「はい。ありがとうございます」
俺とジャックは各々の部屋に入る。
部屋にはシングルベット、衣類棚、シャワーとトイレ、椅子と机が置かれていた。ビジネスホテルの1室をRPGの世界感に移したみたいな部屋だった。
「とりあえず、少し休も。腰が痛い」
数時間の馬車旅に疲れた俺はベッドに横になった。
エンブレム=国旗と考えてもらえればいいです。