第百二十八話 「…あ、ああ」
第四章開幕。下手くそですけど西大陸の地図も置きました。国の配置がこういう感じなんだ位に分かってもらえれば幸いです。
この世界の交通機関はあまり発展していない。地下鉄や車などは無く、人々の主な交通手段は馬車になる。魔法での移動手段も存在するが魔導士でもない俺達が使えるものではない。
「うおー。すげー」
よって俺とジャックは平民でも安心して使える格安の馬車に乗ってシャルル王国王都に向かっている。馬車を引いているのは御者に調教された馬型の魔物。てっきりユニコーンやスレイプニルなどに引いてもらえると思ったのだが、そういう稀有な魔物が引くのは貴族や王族のようなもっと高貴な人達が乗る馬車だ。庶民の俺達が乗っている馬車を引くのは地球の馬の見た目とほとんど変わらない哺乳類魔物ホース。
馬車を引く魔物にはいささかがっかりしたが俺の落胆は馬車が走ってすぐに消え失せた。人生初の馬車、乗り心地はそこまでよくはないが客車部分から見える景色は素晴らしかった。
(都会では決して味わう事が出来ない景色。豊かな大地を走る馬車は絵になる。今どきに言えば映えると言うんだろうな)
「ヒロシ、おとなしくしてくださいっす。子供じゃないんすから。恥ずかしいっす」
一緒に乗り合わせた他の人達に頭を下げているジャックにライトアーマーを軽く叩かれた。
「ん?ああ、ごめんごめん。だって初の馬車だったから」
俺は外を見るのを止めて、言われた通りにおとなしく座りなおした。
(初めての馬車についはしゃいじゃったな)
3月31日 16:00
馬車に乗って数時間やっと目的地のシャルル王国王都に着いた。
「よいしょっと」
長時間の馬車で痛めた腰に手を当てて俺は馬車から降りた。
「ここがシャルル王国王都」
「うす。王都シャルティアっす」
正門近くの馬車駅から降りて見た王都シャルティアはまさに圧巻。王都全体が1つの芸術に見えた。奥に見える白亜の城はもちろん石畳の道から建物の1棟ずつが景観を損なわないように見事に配置されていた。
第2都市のブィンドも美しかったが王都シャルティアには煌びやかさがある様に思える。
「とりあえず宿に向かうっすよ」
シャルル王国に渡ってきた時に1度来た事があるジャックは圧倒されている俺を放って先に行く。
「…あ、ああ」
ちなみに宿屋はすでに予約してある。マザーステイストのおかみさんの従姉弟が王都で宿屋を開いているらしく、騎士試験の事を知ったおかみさんが手配してくれた。
王都の街並みを楽しみつつ俺達は宿屋を探す。
やっとブィンド以外の町に行ける。