第百二十七話 「悪い悪い。んじゃあ行きますか。」
今月2話目。
騎士試験とは教会が毎年4月初旬に各国の主要都市で開かれる騎士見習いのためのテストだ。これに合格した者はやっと騎士見習いから騎士に昇格出来る。試験期間は3日、内容は筆記、実技、面接の3項目がある。この3項目の総合点が平均以上だった場合合格となる。
(てことは毎年半分近くが落ちているのか。)
昨年、ジャックは実技と面接の点数が悪く不合格になってしまった。
(実技は装備面が大きいだろうな。そして、面接は多分種族関係か。)
ジャックと親友はわざわざハーフの偏見が少ないシャルル王国に来たが、合格したのは親友だけだった。偏見が少ないと言ってもする人はいるわけでジャックは運悪くそういう面接官に当たったのだろう。
「じゃあ、いつ頃向かう?」
「そうっすね。出来れば1週間位前には着きたいっすね。試験が近いと宿屋も取りにくいっすから。」
セロでは元居た世界みたいに手頃に予約が出来ない。予約する主な手段は手紙だ。ただ面倒なので俺達は早めに行き宿屋を確保する事にした。余分な費用がかかるが必要経費と考えよう。
(それに王都には俺も色々と用があるし。)
「分かった。」
それから十数日、俺達はクエストなどをこなしつつマジックバックや簡単な料理器具などの旅必需品を揃えたり、王都へ行くための準備で慌ただしく動いていた。
3月31日 11:00
「忘れ物はないわよね。何かあったら直ぐ連絡するのよ。」
「分かってます。大丈夫です。それではいってきます。」
子が親元を離れて外国へ留学しに行く並に心配するエイラさんを宥めつつ、俺はドアに手をかける。
「あまり無茶をしないようにな。」
「気を付けていってきなさい。」
「ジャック試験頑張れーよ。」
「ジャックご武運を。」
ケビンさん達に盛大に送られ俺とジャックはファミリアサンダーバードを出た。
玄関を出て少し歩いた後にもう1度ファミリアの方へ振り向いた。
(ブィンド以外の街に行くのか。やっと冒険者らしくなってきた。皆さんいってきます。)
「ヒロシどうしたんすか?馬車に遅れるっすよ。」
「悪い悪い。んじゃあ行きますか。」
次話は外伝になります。