第百二十六話 「うす。ばっちりっす。」
今月は諸事情によりあまり投稿できません。すみません。
「ヒロシ、今回はフォローに徹してくれないすか。」
目の前のホワイトバックから目をそらさずジャックは言った。
「1人でやりたいってか。」
「うす。今の自分でどこまでやれるか試したいっす。」
ノソノソと大熊は近づいてきている。
「はあー、分かったよ。今回は中遠距離からの牽制を主にやってやる。だが、やばくなったら問答無用で割り込むからな。」
「…ありがとうっす。」
俺は少し距離を取った。それが隙と見えたのかホワイトバックは俺を狙って突進してきた。
「っち。」
俺はすかさず短剣を抜く。
「うおおお!」
ジャックが俺とホワイトバックの間に割り込む。
ガン
大熊とジャックがぶつかる。ジャックは約500㎏の衝撃を見事止めて見せた。
(車の衝突クラスを易々止めるか。)
体長2m強の大熊は当然上から覆いかぶさる。下のジャックを圧し潰す勢いだ。体勢的に上が完全に有利ポジション。
俺は投げナイフをエクストラポケットから取る。もしもの場合はこれで隙を作ってジャックを救助する。
「なめるな!」
ジャックは盾で大熊の巨体を支え、片手直剣を左胸に突き刺す。
「!グルルル。」
ジャックの反撃に距離を置く大熊。傷は特性剛毛故に致命傷にはなっていない。
(やっぱり厄介な特性だな。)
ホワイトバックは回り込もうとするがジャックも正面位置を離さない。
「グル。」
ジャックの左側から腕の1撃がくるが、盾で防ぐ。がら空きの横腹を切り裂く。
(大丈夫かな。俺みたいに武器が折れなければいいが。)
ガンカンゴン
ジャックとホワイトバックの戦闘はすでに10分になる。体力勝負ではホワイトバックには絶対に勝てない。長引けば長引くほどジャックの方が不利になる。
大熊の突進にジャックは左手に持っている円形の盾を投げつける。当然その程度の攻撃にホワイトバックはひるまない。逆に激昂しさらに速度を上げてジャックに襲い掛かる。
(やばい。)
「大丈夫っす!」
投げナイフを投げ込む寸前ジャックの声で動きを止めた。
ガッガリ
ジャックは自分の左腕を大熊に噛みつかせていた。そのまま開いた口に片手直剣を突き刺す。
「!グ」
ホワイトバックの体がビクンと1度身じろぎ、そして動きが止まる。
「ジャック!」
俺は倒れた大熊に近づいていく。体勢的にジャックはホワイトバックの下敷きになっている。
「ふう。大丈夫っす。」
ホワイトバックの体の下からズルリとジャックが出てきた。
「お前なあ。」
俺はジャックの体を引き起こす。
ジャックは左腕の噛み傷以外ほぼ無傷でホワイトバックを倒して見せた。これで俺達はベーテの森の主2体を連続で倒した事になる。
(今回はほとんどジャックの手柄だな。外からではなく内から倒すか。俺の毒と似ているがまた違う倒し方だな。)
3月19日 18:00
マザーステイスト
『乾杯!』
俺とジャックはギルドの報告を終え、マザーステイストで打ち上げをしていた。
「流石フルプレートっす。傷はあるっすけど大した損傷じゃないっす。」
「でも、一応おやっさんに見せとけよ。」
「うす。これで何事も気にせず試験に行けるっす。」
漫画でよく見る骨付き肉をモグモグ食べながらジャックは話す。
「そうだな。これでベーテの森攻略としよう。」
「それで試験の準備は出来ているのか?」
「うす。ばっちりっす。」
やっとベーテの森攻略完了。