第百二十五話 「やるぞ!」
今月最後の話になります。
ジャックが水辺に近づいていく。俺はその後方2、30メートルで待機する。ジャックが引き付け、出てきたタイラントサーペントを叩く構えだ。
はたから見ればなかなかのクレイジーな作戦だ。餌に自分を使って大蛇を釣ろうなんて。
バシャバシャ
ジャックはわざと水辺で音を出して、大蛇をおびき寄せようとしている。
バシャ
「!」
いきなり水中から大きな影が現れ、一瞬でジャックに飛びつく。
ガッガガガガズザザザ
ジャックは反射で噛みついてきた魔物を捕える。勢いでジャックが数メートル後ずさるが段々勢いは落ちる。
(勢いで分かる。タイラントサーペントだ!)
「ヒロシ、そっちに飛ばすっす!」
ジャックは上手投げでこっちに大蛇を投げる。
「ああ。任せろ。」
ドシン
投げてきた大蛇は体長7mもある大物だった。黒をベースに黄色の斑模様、瞳は緑色をしている。二股の下を出し威嚇してきた、俺は双剣で追い打ちをかける。
大蛇は湖に戻ろうとするが俺とジャックが行く手を阻む。噛みついてくるが横に蹴り飛ばす。
「っつ!」
流石に大物すぎたか、足に少し痛みが走った。
ガリガリガリ
鱗は硬かったが構わず削っていく。水中では強敵だったのだろうが、地上ではそこまで苦戦しなかった。ジャックが地上に引きずり出した時点で勝負は決まっていた。
10分くらいの攻防の後、タイラントサーペントはゆっくりと倒れる。
(体力はなかなかあったな。流石ベーテの森の食物連鎖の頂点に立つ魔物の1体。)
パチン
タイラントサーペントを倒し俺とジャックはハイタッチする。
早速タイラントサーペントを解体する。解体時間は30分と出ている。
(間違いなく大型魔物だからな。今日の予定はこれで終わりだし。ゆっくりするか。)
「ナイス、ジャック。良く捕まえてくれた。」
「ありがとうす。壁役っすからね。」
俺とジャックは地面に座り1息つく。
(これでベーテの森は攻略完了か。思った以上に達成感とかないな。)
「!ジャック、戦闘準備!」
茂みから気配を感じる。完全なる殺気、俺達に向けての敵意。
「うす!」
バキパキ
物音など気にもせずそいつは茂みから姿を現す。ベーテの森の王と言わんばかりに悠々と出て来る。大蛇と変わらない存在感。特徴のある白い背中以外の全身は黒い毛に覆われた巨体。
「グルルル。」
大蛇の血の匂いに誘われた大熊は獲物をよこせと言わんばかりに俺達を威嚇する。
「どうするっすか?」
ジャックは前に出て構える。
(逃げる事は簡単だ。だが黙って奪われる謂れはない。)
「やるぞ!」
因縁の相手にここで終止符を打つ。こいつに教えてやる今度はこっちが狩る側だという事を。
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