第百二十四話 「うす。」2
またまた被ったサブタイトル。
3月19日 9:00
ベーテの森
冬に積もりに積もった雪が解け始め、歩きやすくなってきたベーテの森を俺とジャックは進んでいた。予定通り3月中旬の今日、目標のタイラントサーペントを討伐しにきた。
約3か月の準備期間で各々強くなった。それは間のクエストなどでお互い確認済みだ。ホワイトバックと同格の魔物タイラントサーペントが相手でも全然戦えるくらいには強くなったつもりだ。
タイラントサーペント:西大陸の水辺に生息している爬虫類の魔物。全長約5m、記録最大サイズ10m50㎝。顎を外す事で口より大きな魔物でも飲み込める。水辺近くに来た獲物を水中から飛び出して、水中に引き込み自身の体で巻きつき身動きを抑えてからゆっくりと捕食する。1度の捕食で数週間は生存できる。気温が下がると冬眠に入る。弱点は氷などの低温。注意点は水中に引き込まれない事。…etc。
以上が魔物図鑑Ⅰや書物で調べた情報だ。倒し方は俺達の作戦では珍しい正面からの戦闘になった。
(俺達が用意できる氷属性の攻撃手段はないし、水中に引き込まれないよう気を付けて戦うしかなかった。)
幸い毒や酸みたいな面倒な攻撃はしてこないのでここはジャックに囮になってもらい、水中から飛び出した大蛇を地上に引きずり出す。そこを2人で叩くという作戦になった。冬眠から覚めて間もない動きが鈍い今が狙い目だ。
まだ雪が少し残る森の中を俺とジャックは進んでいく。ベーテの森の最深部に行くのは今日が初。今まで何度も目前までは来ていた。
ちなみにタイラントサーペントの討伐ランクはホワイトバック同様E。俺とジャックはこの3か月の間でGからFランクに上がっていた。
(ようやく中級冒険者目前まで来られた。ランク上げも楽じゃなかったな。)
ベーテの森 最深部
湖付近は少し開けていて静まり返っていた。まるで聖域みたいな神々しさすらある。
「ふう。」
1度深呼吸して息を整える。隣のジャックを見ると武器確認をしていた。
「大丈夫か?」
「もちろんす。ちゃんと受け止めるっすよ。」
(本当に頼りになったな。)
ベーテの森に来る前に湖に引き込まれないように命綱はいるかとジャックに聞いた所即答で動きが阻害されるから要らないと言われた。
「んじゃあ、始めるか。」
「うす。」
知らないところで成長している2人。