第百二十話 「それもそうすね。」
今月第一話。
ドス
アイアンアントの頭部に火矢が刺さる。
「はあ、はあ、はあ。」
アイアンアントの数は確実に減っているが、予想していたより大分兵隊蟻が多い。
ちらりとジャックの状況を確認する。ジャックもアイアンアントの猛攻に耐えながら確実に1匹ずつ倒している。
(負けてられないな。)
ボッボ
火矢に炎を点け、自分に1番近くにいるアイアンアントに狙いをつけ火矢を射る。
「ギギギ。」
右前足を射抜かれた蟻はバランスを崩し前方に転がった。
「ッチ、足か。」
俺は弓をエクストラポケットにしまい、短剣を抜いた。
目の前に転がってきた蟻の頭を斬り落とす。これでジャックからもれた蟻は倒し終えた。
(エクストラポケットの使い方も慣れてきたな。これなら瞬時に装備をいれ替えられる。)
「ジャック少しさがれ。」
俺はけむり玉をジャックにいた場所に投げ込んだ。ジャックは慌てて数歩後ろに下がった。数秒後けむり玉はジャックが居た場所で破裂し、辺りに煙が舞う。
(これでアイアンアントの動きは一旦封じられただろう。)
俺は短剣を焚火で少し熱してからジャックの隣に移動する。
「投げるなら投げるって言ってほしいっす。」
「言っただろさがれって。」
俺は顎で前を指した。煙の奥からアイアンアントの影が映り、こちらに近づいているのが見えた。
「これで最後か。」
俺は少し熱い短剣を構える。
「いや、巣の中に女王がまだいるっすよ。」
数分後俺達は兵隊蟻の解体をしていた。合計で25匹、俺達が襲った巣はなかなかの大群だったようだ。
「はあはあ、で中の女王はどうするっすか?」
ジャックは大木を背に座り込んでいる。
「今日は良いんじゃないか。素材は十分集まったし。」
正直これから巣を探索する気にならん。
俺達が倒したのはあくまで兵隊蟻、巣には当然蟻を統べる女王蟻と卵と幼虫達がいる。図鑑では女王蟻は腹が大きすぎて、巣の最深部から大して動かないらしい。討伐するのはさほど難しくないらしいが、迷宮みたいになっている巣を攻略するのは一苦労だ。今日はここまででいいだろう。
「それもそうすね。」
ジャックも賛成のようだ。
アイアンアントの素材を回収した俺達はブィンドに戻った。
装備用の素材が揃った。