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現実逃避からの異世界冒険物語  作者: Piro
下級冒険者編
143/386

第百十九話 「ああ、見えている。」

8月最後の話です。

 道具屋アナグラから出た俺達はそのままベーテの森に向かった。

「でも良かったす。今日のアイアンアントの素材で足りる事になって。」

 クエストにはアイアンアント5体を討伐と書かれていたが、要するに巣1個分の事だ。巣にちょっかいを出せば巣を守る兵隊蟻がぞろぞろと出てくる。サイズ的に言えばジャイアントスパイダーと比べて小さいがその分連携してくるのが厄介だ。

(完全に囲まれる前にどれだけ倒せるかが問題になりそうだな。)

 ちなみにアイアンアントやジャイアントスパイダーの討伐クエストには2種類存在する。1つは俺達が受けた何匹かを討伐するクエストで、もう1つは巣も含めての攻略クエストだ。当然後者は時間がかかる上に難易度が高いが、その分報酬も高い。俺達がそっちを取らなかった理由は人手が足りないからだ。ジャイアントスパイダーの巣には大量の蜘蛛の糸、卵や捕えた小動物などがあり、2人でそれらを処理するにはかなりの時間がかかる。アイアンアントも同じで巣の完全攻略をするには最短でも3日はかかる。故に俺達みたいな少数パーティーは単純な討伐クエストを取る事が多い。

(いずれは巣の攻略もしたいけどな。それには人数を揃えるか実力を上げていくしかない。)

 今日の作戦も基本的にはジャイアントスパイダーと変わらない。ジャックが前衛で出来るだけアイアンアントを引き付けて、俺が後衛から火矢で援護する。違うのは設置する焚火の数だけだ。ジャイアントスパイダーとの戦いでは1、2個だったが、今回は最低でも3個は設置しようと思っている。基本個体で生息しているジャイアントスパイダーとは違いアイアンアントは群れで生息する。前衛のジャックから抜けた数匹が焚火を壊さないとも限らない。焚火の場所に移りながらターゲットを火矢で射る立ち回り方を行わなければいけない。

「シ…ヒロシ!」

 考え事をしていた俺はジャックの呼びかけに反応が遅れた。

「!な…何だよジャック。」

「何だよじゃないすよ。もう森に着いたっすよ。大丈夫すか?具合が悪いんだったら今日はよしといた方がいいんじゃないすか?」

 ジャックはただ呆けていた俺を気遣ってくれた。

「大丈夫だよ。ちょっと考え事していただけだ。行くぞ。」

 俺はリュックから地図を出して、アイアンアントの巣の位置を確認する。


ベーテの森 中部

ガッガガ ガキン

「!!ヒロシ!数匹抜けたっす。」

 ジャックはアイアンアント5匹を抑え込みながら俺に叫ぶ。

「ああ、見えている。」

 俺は前に数メートルに近づいてきていた蟻を射抜き、ジャックの方へ向く。

(抜けたのは3匹か。まず手前から片付ける。)

 戦闘が始まって約5分俺達はアイアンアントの群れの猛攻をどうにか凌いでいた。幸いだったのは1体を倒すのに使う火矢の本数だ。ジャイアントスパイダーは平均3本必要だったが、アイアンアントは蜘蛛より体力が少ないのか1から2本で倒せた。

(頭部を射抜けば1発なんだけどな。手元が少しぶれれば狙った所から外れてしまう。必要なのは平常心と集中。)

 俺は手前の蟻を火矢で射る。見事頭部に刺さり、ばたりと蟻は倒れる。

 4つ用意した焚火を移動しながらアイアンアントを火矢で射っていく。

 驚いたのはジャックの防御力だ。アイアンアントの強靭な顎の攻撃をものともしない、流石に装備を溶かす酸には気をつけて立ち回っているようだ。

わらわらと出て来る蟻。幼少の頃に蟻の巣をつついたのを思い出す。

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