第百十六話 「流石ヒロシ分かっているすね。」
今月4話目。
「ギギギッギ…。」
「よし、これで3体目!」
俺達は順調にジャイアントスパイダーを討伐していった。消耗もほとんどない。これは魔物図鑑のおかげで知りえた弱点を狙う事で常に優位を保ち続けられた事が大きい。事前に巣の位置を見つけていた事もあり、まだ1体目との戦いから1時間ほどしか経っていない。
「なんか…物足りないすね。」
解体しながらジャックが呟いた。
「逆にこれだけ事前に準備してまったく歯が立たなかったら困るけどな。」
ジャックの役目は大蜘蛛を抑える事、壁役としてはレッドボアレベルの方が達成感あるのだろうな。
「このままいけば今日で終われそうすね。」
「ああ、…次の巣に向かう前に火矢の補充をさせてくれ。」
これまで使った火矢は9本。事前に作った火矢のほとんどを使ってしまった。
「了解す。」
俺は少し開けた場所に移動して、エクストラポケットから鋼鉄の矢10本と油紙を取り出した。スキル想像力で火矢を作っていく。
「よし、作り終わったぞ。」
数分後、火矢10本を作り終えた。
「それじゃあ次の巣に向かうっす。」
しかし、次に向かった巣は既に他の冒険者が討伐した後だった。仕方ないのでジャックと手分けして新しい巣を探す。
「ヒロシ、見つけたっす。」
ジャックが見つけた巣に向かう。ジャックが見つけた巣穴は少し大きく作られていた。
「どうすか?」
「ちょっと待て。」
俺はアビリティ千里眼を使い巣の中を透視する。フローズンベアの時にこのアビリティを使えば、もっと早くに察知出来ていた事を知った。そうすれば瀕死の重傷は避けられたかもしれない。失敗を生かすためにもこれからはもっとアビリティの使い方を知っていこうと思う。
「中にジャイアントスパイダーが2体いる。」
巣穴が大きかったのは2体分だったわけか。こういうイレギュラーがあるから油断できない。
「2体すか。他の探すっすか?」
「いや、2体いる事は分かった。なら2体とも倒そう。ジャックも物足りないって言っていただろ。」
ちょっとした練習にもなる。どうせ、次に討伐しようと考えているのはアイアンアントだ。2人しかいない俺達は否応でも1対多数の戦いをしなくてはいけない。最悪2体くらいなら逃げられる。
「流石ヒロシ分かっているすね。」
ジャックはやる気十分の様だ。
俺は念のために焚火を2つ設置した。1つが潰されても、もう1つの焚火の所に移動すれば、火矢が使える。
弓と火矢、そして火元を用意し終えた俺はジャックにアイコンタクトを送る。
ボン
ジャックが投げ込んだけむり玉が巣の中で破裂する。煙が充満していき、ジャイアントスパイダーが2体とも巣穴から出てきた。
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