第八話 「ケビンさん達が帰ってきたみたいだーな。今日はここまでにするーか。」
やっと置ける。
この世界に来て俺の生活習慣も変わった。元の世界では夜型だったのが今は超朝型になった。朝起きて下の共同の水場で洗顔と歯磨きをしたら、庭で木刀を振る。木刀などの武器は庭の隅にある蔵に置いてあり、自由に取り出して練習に使っていいそうだ。
フン ブン
「お!朝から素振りか、頑張ているねぇー。」
木刀で素振りをしていたら右頬辺りに切り傷がある男性、エースさんが庭に出てきた。本名エース・チキンナゲット、彼もファミリア サンダーバードに所属する冒険者だ。職業は剣士(だがリシンさんみたいな侍が使う刀ではなく大剣を使う)でラウラさんと同じパーティーに入ってる。語尾を伸ばす特徴的な話し方をする方だ。
「エースさん。おはようございます。体力つけるための素振りですよ。エースさんのようなキレもないですし。」
俺は手を止め挨拶をした。
「それでも、努力は努力だーよ。続けていればキレも自ずと出て来るーよ。積み重ねは大切だからーね。どう?久しぶりに手合わせしてみーる?」
エースさんが蔵から木剣を持ってくる。
「本当ですか?お願いします。」
「よーし。始めようか。今日は俺に両手を使わせる事が出来るかーな。」
エースさんは片手で木剣を振り回しながら言った。これは決して油断ではない。俺とエースさんではそれくらいの差がある、いやそれ以上の差だろう。ちなみに、俺の剣の師匠はエースさんだ。この場所に連れられ暇な時間に庭で適当に木刀を振っていたら、剣術の基本を教えてくれた。それから、たまに手合わせや指導してくれる。エースさんやラウラさんみたいに此処にいる人達はいろいろ教えてくれる。
「ふう。」
息を整え木刀を構える。そして前にいるエースさんに勢いよく斬りかかる。それをエースさんは軽く横に移動してかわし、右手に持っている木剣でがら空きの俺の背中を狙う。俺は勢いそのまま前に飛び、エースさんの木刀から避ける。そして、素早く体勢を整える。しかし、顔を上げるとすでにエースさんの一撃がきていた。おれはとっさに木刀を横に構え防御の構えを取る。。
ガッ
木刀と木剣がぶつかる音がする。
「ただいま!」
誰かの声が聞こえた。俺とエースさんは動きを止める。
エースさんが木剣を引く。俺も声のする方を見る。聞き覚えがある声だ。
「ケビンさん達が帰ってきたみたいだーな。今日はここまでにするーか。」
エースさんが木剣を置いてそのまま建物に入っていく。
俺は木剣と木刀を蔵に直し、家に上がった。
リビングにはファミリアの皆が集まっていて、中心には中世の鎧を着た大男、吟遊詩人風な優男、魔導士風のローブを着た美女、和服の女侍がいた。
これからも続きます。