第百十五話 「ッギギギ。」
今月3話目。
「よいしょっと。」
俺は枯れ葉や枝を集めていく、ジャックの方を見ると片手剣と盾の最終チェックをしていた。
(そういうのは戦う直前でする事じゃあないんだけどな。ワクワクでじっとしていられないんだろうな。気持ちは分からなくはないけどな。新しい素材や魔物に出会うのは冒険者の特権だからな。)
材料が揃った所で俺はスキル想像力を発動する。目の前に焚火が出現した。
「何回見てもやっぱりすごいっすね。」
いつのまにかジャックは近くに来ていた。
「ああ、本当に便利なスキルだよ。」
焚火はジャイアントスパイダーの巣から少し離れた所に設置した。ここから俺は火矢を放っていく。
「これで準備完了すね。」
「そうだな。蜘蛛の酸と糸には十分気をつけろよ。」
「うす。」
ジャックは巣にドンドン近づいていく。俺も弓と火矢を装備して待つ。
「よし。いくっすよ。」
ジャックは俺の方を振り向く、俺は頷いて合図を出した。
俺の合図とともにジャックは振りかぶり、右手に持っているけむり玉を巣に投げ込んだ。
ボン
ちょっとした爆発音がしてから、大量の煙が巣を包み込む。
「ギギギ。」
うめき声みたいな声がする。そして、煙の奥に影が見えた。俺は火矢に炎を点け構える。
「ギギギギギ。」
声の主は煙で充満している巣から飛び出し、ジャックの前に現れた。
体長1m超、顔に円形に散らばっている8つの目が集まった黒蜘蛛。
俺は構わず矢を射る、矢は右腹部付近に刺さった。
「ギャー。」
図鑑で読んだ通り、煙と炎はかなり苦手らしい。俺は次の火矢を準備した。
ジャイアントスパイダーは目の前にいるジャックに酸を吹きかけるが、ジャックは横移動して避ける。
ジャックには武器に相性が悪い酸は避けて、糸も避けるか盾で受け止める様に伝えてある。
2本目の矢は顔の左側にある目の1つに当たる。
「ッギギギ。」
ジャイアントスパイダーは2本の火矢とけむり玉でかなり弱まっていた。しかし、俺は油断せずに3本目の火矢を番える。
ガッガガ
ジャックは隙を見て片手剣で応戦している。蜘蛛の8本の足を盾と剣でうまく受け止めている。ジャックの役目は蜘蛛がこちらに向かわないように抑え込む事。これで俺は弓に集中できる。
ドシン
3本目の矢が顔右側に刺さった事でジャイアントスパイダーは倒れた。ジャックがこちらにグ―サインを出している。
(予想より大分早めに終わったな。滑り出しは上々だ。)
俺は焚火の火を消してからジャックの方へ向かった。
ジャイアントスパイダー難なく倒していく。