第百三話 「それより、先ほどの話の続きなんですけど…。」
今月三話目。
礼拝堂にはすでに50人前後の人達が来ていた。先ほど見かけた女の子と母親も長椅子に座って、司祭が来るのをおとなしく待っている。俺は目立たない様礼拝堂の隅の席に座った。礼拝堂は広めに作られていて、数百人が余裕で入れる空間がある。ぎゅうぎゅうにすれば1000人くらいは収容できる。礼拝堂を美しく映えさせる様に窓にはステンドグラスが装飾されている。正面には司祭が話をする教壇が置かれていた。
(教会の礼拝堂だから重々しい所なのかと思っていたけど、そんな感じはしないな。職員と礼拝者も仲良く談笑している。)
暫くすると司祭らしき男性が現れた。その後10分くらいの話の後祈りの時間が始まった。作法などは全然分からなかったので見様見真似で祈った。目をつむり、手を組む。
(多分この際に神様への願いなどを込めるんだろう。〝神様”に叶えてほしい願いか…帰らせてくれしかないな。)
祈りの時間が過ぎ、来ていた人達は各々帰っていく。中には司祭と話している人やシスターに悩みを聞いてもらっている人もいた。
(さてと、暇つぶしには十分なったし。少し早めだがマザーステイストに向かうとするか。)
「あの、何かお悩みではないですか?」
俺が立ち上がり礼拝堂から去ろうとするとシスターの1人に呼び止められた。
「え!」
「あ、失礼だったらすみません。私ここでシスターをしているリサ・ロストシープと申します。」
(あれこの人どこかで見た事があると思ったら教会の入り口で案内していた人か。)
「あ、俺はヒロシ・タナカです。冒険者をしています。」
「タナカさん…それで何かでお悩みではありませんか?」
(そう唐突に言われてもな。悩みはなくはないがここで言える悩みはない。それに…。)
「あの、俺ってそんなに悩みがあるように見えますか?」
昨夜ケビンさんにも似たような事言われたからな。もしかして相当顔に出やすいのか。
「いえいえ、これは私のスキル迷える子羊の効果で…。」
「!」
「え!」
俺は思わずシスターの手を引っ張り外に連れ出す。
(何考えてんだ。人前で自分のスキルの事を話すなんて。)
俺は礼拝堂から少し離れた所にあるベンチの所までシスターを連れて行った。その間シスターは声を出さなかった。驚いて声が出なかったのかもしれない。
「引っ張り出してすみません。人前でスキルの説明を始めるので危ないと思いまして。」
俺は頭を下げ謝った。下手したらセクハラだからな。
「…そうだったのですね。大丈夫ですよ。タナカさんは優しい気の持ち主なので安心していました。」
シスターはまたおかしな事を言う。
(まさか不思議ちゃんか。とりあえず信頼はして貰っているようだけど。)
「それより、先ほどの話の続きなのですけど…。」
この回はちょっとした伏線を張りました。その伏線がいつ回収されるかはわかりませんが。
編集点礼拝堂の収容人数を多めに書きました。