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現実逃避からの異世界冒険物語  作者: Piro
下級冒険者編
118/385

第九十七話 「いえ、何でもないです。」

今月最後です。

12月11日 15:00

「ただいま。」

「おかえりなさい。」

 キッチンの方からエイラさんが出てきた。

「思ったより遅かったのね。」

「はい。買い物もしてきたので。」

「そう。今日の夕飯はペグンの照り焼きよ。」

 ペグンとは前にも食べた事がある鳥類の魔物だ。味は鶏肉よりも鴨肉に近い。

「いいですね。楽しみにしてます。」

 俺は自室に向かった。


ファミリア サンダーバード 自室

(夕飯までどうしようかな。)

 俺は次の目標にしようとしているアイアンアントとジャイアントスパイダーの事を魔物図鑑Ⅰで調べる事にした。どちらもベーテの森で見かけた事がある。アイアンアントに至っては1体倒した事もある。俺はベッドに寝そべり魔物図鑑Ⅰをめくっていく。

(弱点とかが載っていたらいいんだけど。)

 アイアンアント:西大陸の森林部分で生息している昆虫型の魔物。大きさは1mくらいで、大顎と酸の攻撃を得意としている。外殻は硬く、装備の素材になる。地中に巣を作り、巣周辺は兵隊蟻が守っている。弱点は煙と火。注意点は巣を攻撃すると兵隊蟻が一斉に襲ってくる為ある程度の距離からの攻撃手段があれば好ましい。…

 ジャイアントスパイダー:西大陸の森林部分で生息している蜘蛛型の魔物。大きさは1m超、糸と酸の攻撃を得意としている。外殻は硬く、装備の素材として人気。地中に巣を作り、群れではなく個体で生息している事が多い。弱点は煙と火。注意点はジャイアントスパイダーの糸は粘着性が強く、無理に引けば引くほど、絡みつく。火などで燃やせば、簡単にちぎれる。…

(ふーん、なるほど。どっちも弱点は煙と火か。とりあえず、炎属性の攻撃手段さえあれば、攻略は出来そうだな。)

「ヒロシ君、夕飯出来たわよ。」

 下からエイラさんの呼ぶ声が聞こえた。

「はーい。」

(攻略方法はまた後で考えるか。)


12月11日 18:00

『いただきます。』

 夕飯時にはファミリアの皆が帰っていた。

「ヒロシ、見たーぞ。」

 エースさんが今朝の新聞の1面を取り出す。

「エースさん、やめてくださいよ。」

(その記事のせいで今日は大変な目にあった。まさか、夕飯時まで出てくるとは思わなかった。)

「そうだぞ、エース。飯時にはしたない。」

 ラウラさんがエースさんから新聞を取り上げる。

「ちぇ、良いじゃねかーよ。後輩の活躍に喜んだーて。」

「本当に活躍なんですかね。」 

 俺はついポツリと呟いてしまう。

(俺が思い描いていた活躍はこういうのではなかったんだけどな。)

 当然、アニメや漫画を好んで読んでいた俺が冒険者という職業に憧れなかったわけはなく、俺も画面越しの主人公になれるかもしれないと思った。ただ、現実はそんな甘くはなく、熊に襲われたり、言葉が分からなくて困ったり、チンピラに絡まれてボコられたりした。今回も倒した事は倒したが、仲間も自分もボロボロ。先輩達には迷惑をかける始末。

(これを本当に活躍と呼べるのだろうか。活躍とは最初に出会った、ケビンさんが1撃で熊を倒すような事ではないだろうか。)

「ヒロシ、なんか言った?」

 ラウラさんが聞いてくる。

「いえ、何でもないです。」

 俺は苦笑いでごまかした。 

ヒロシにとっての活躍とはどんなのか。現実とのちょっとした葛藤ですね。

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