第八十三話 「な!」
今月第三話
「グルワァーーー。」
2足歩行で襲ってくるホワイトバック。今度は上からではなく左右から攻撃してくる。俺は後に跳んで直撃を避ける。
バキ
右側にあった木がホワイトバックの右腕の1撃で軽々折れる。
(うわー。あんなの直撃したら終わりじゃん。)
戦闘が始まって15分くらい経ったと思うが、まだ大熊の攻撃は1度も俺に届いていない。考えないようにはしていたが、俺がここで倒れる事は俺とジャックの死に直結する。
(1撃でも直撃したら即終了の戦いか。クソ、どんなクソゲーだよ。)
「はあ、はあ。」
緊張と恐怖で息遣いが早くなる。
(落ち着け、とりあえず試せる事をしよう。)
俺はダガーを逆手に持ち変え、ホワイトバックの右腕からの横振りを躱す。そして、がら空きの右横腹にダガーでなぞり、削っていく。ついでに足でホワイトバックを蹴って距離を取る。
「!ッグル。」
俺に蹴られたホワイトバックは体勢を崩す。
(よし、効いてるぞ。このままこの方法で少しずつ削っていって、毒を体内に入れる。)
そこからは同じ作業だった。攻撃の後の隙を見つけては表皮を削っていく。横腹、両腕、胸、背中はまあまあ削れた。
「はあ、はあ。」
疲労はすごくあるが、このままいけばどうにか完封できるかもしれない。
「グルアア。」
目の前のホワイトバックが焦っている様に見える。
突進してくるホワイトバックをギリギリの距離で躱し、がら空きの背中を抉る。
パキン
「な!」
右手のダガーが折れ、俺の動きが一瞬止まる。ホワイトバックが振り向きざまに左腕を振るう。
(やばい。)
俺は全力で後に跳ぶ。右手に握っているダガーの柄部分を投げ捨てる。
カン
大熊の振り向きざまの1撃が鎧の胸部分を掠った。俺はバランスを崩し、地面に倒れそうになるが空いた右手で全身を支え、地面を押す。空中で半回転してバランスを取って、どうにかホワイトバックと距離を取る。
攻撃が当たった鎧の胸部分を確認する。
(少し凹んでいる。掠っただけでこれかよ。なんつうパワーだ。)
今のでホワイトバックの恐ろしさを再確認し、気を引き締めなおす。
(ダガーが1本だけになっちまったが、大分削れた。そろそろ毒が回ってもおかしくないと思うが。)
猛毒(普通)はレッドボア専用ではなく、大型の魔物用だったはずだから効かないわけではないと思うが、この個体が毒耐性なんてアビリティを持っている特殊個体でない限り。
(武器がダガー1本になってしまったが戦い方は変わらない。毒が回りきるまで、削り続ける。)
年末年始はゆっくりしたい。