第八十二話 「はい。」3
今日二話。
坂を登ってきたホワイトバックと対峙する。
「グルウァーーー。」
吠えながら突進して来るホワイトバック。俺は冷静に横にステップし直撃を避ける。避ける際横腹にダガーで斬りつける。
ガン
鈍い音がするが切れた感触はなかった。やはり特性の剛毛のせいで刃が通っていない。
「クソ。」
ダガーの刃をちらりと見る。折れてはいなかったが少し刃こぼれがあった。たった1度斬りつけただけで、刃こぼれしていては今の斬り方では長くはもたないだろう。
俺は思考しながら、襲ってくるホワイトバックの1撃1撃を丁寧に対処する。ダガーには猛毒(普通)が塗ってある。俺の勝ち目はこの毒を体内に入れ、ホワイトバックを毒殺する以外ない。心配なのはダガーの耐久度だ。少しぶつけただけで刃こぼれするこのダガーではどこまで持つか分からない。
(頼むからこの戦いが終わるまでは持ってくれ。)
上から大熊の1撃が振り落とされる。俺は全力で飛び跳ね、距離を取る。戦闘面で俺がホワイトバックより勝るものはスピードと視力だ。アビリティの視力(Lv Max)とイーグルアイにより俺には死角がほとんど存在しないし、1対1ならほとんどの攻撃は見切れる。脚力(Lv 2)のおかげでスピード面は勝っている。
(後は有効な攻撃手段さえあればいいのだが。)
「グルアアー。」
攻撃が当たらずいらついているのかホワイトバックがまたも吠える。全速で突進してくる大熊を俺は先ほどと変わらず横に移動し避ける。今度も横腹に切りつける。
ジョリ
「ん?」
先ほどとは違う感触、ダガーを見るとそこには毛と薄皮の欠片が刃についていた。丁度振り向いたホワイトバックの横腹を見るとそこには些細な傷が出来ていた。
(!そういう事か。)
俺は数か月前にエースさんが教えてくれた斬り方を思い出す。
俺は庭でいろいろな剣を並べながらエースさんの話を聞いていた。
「よし、ヒロシ今日はいろんな斬り方を教えるーぜ。」
「お願いします。」
「魔物によってはただ普通に斬りつけても大したダメージを与えられないのもいーる。」
エースさんは適当に剣を取り、構える。
「そういう時は斬るだけじゃなーく。攻撃手段に削ったり、打撃を入れる必要もあーるぜ。」
エースさんは手本として数回剣を振って見せてくれた。
「ほら、ヒロシも試してみーな。」
「はい。」
(確か打撃は剣の腹で叩いて、削る時は斬る時に敵の表皮をなぞるイメージでって言ってたな。さっきは偶然出来ていたのか。)
この斬り方なら剛毛なホワイトバックに有効な攻撃が思いついたかもしれない。
(とりあえず試してみるか。)
この数か月は1日に一気に投稿しています。